深センに本社をおく優地テクノロジー(Excelland Technology)は2013年の設立以来、堅実に業績を伸ばして来たが、その道程はならだかではなく、さまざまな紆余曲折を経て来た。創業直後は自動運転技術の研究から事業を始めた。大手半導体メーカーであるNvidiaをパートナーとし、当時最先端であった自動運転技術の技術開発に没頭したが、自動運転は時代的に早すぎて産業としての広がりがなく、ビジネスとしてはものにならなかった。創業4年目の2016年、優地テクノロジーは新しい領域に参入した。サービスロボット領域である。投入された新商品は、これまでとは全く畑ちがいの、室内用自動配送ロボットであった。
「優小妹」(ヨウシャオメイ)という名のそのロボットは「優秀な妹ちゃん」を意味する。このロボットは2016年からバージョンアップを続け、投入から7年目の現在も売筋商品として活躍している。上記写真は「優小妹」が自動販売機システムと連動し、自動販売機で買い物をして、買った商品を搬送しているところで、優地テクノロジーがユーザーの声に合わせて開発して来た数多くのアプリケーションの一つである。アプリケーション開発も優地テクノロジーの強みで、同社の開発部隊はユーザーの声を素直に聞き、迅速にアプリケーションを開発する事を得意としている。
その後も優地テクノロジーはサービスロボットの開発を続け、2017年に「優小弟」(ヨウシャオディー・優秀な弟ちゃん)、2018年に「優小哥」(ヨウシャオグゥ・優秀なお兄ちゃん)と商品ラインナップを拡充して来た。それにあわせて数度に渡りエンジェル投資会社から資金を募り、数十億円の資金調達にも成功した。資金は積極的に開発投資にまわし、アプリケーションは飛躍的に増加した。優家の妹と弟と兄が走り回る領域は順調に広がっていき、カラオケ屋とホテルでは特に大きな成功を収めた。優小哥は室内ではなく、屋外配送に特化したロボットで、優地テクノロジーのサービスロボットは室内から屋外までの横移動、エレベータを利用した縦移動が可能になり、広大な範囲をロボットで搬送できるようになった。
その優地テクノロジーが現在、日本進出を準備しているという。同社は累計で9000社の取引先があるというが、その大部分が中国市場の顧客である。日本を始め、欧米やアジア、中東各国への輸出実績もあるが、いずれも物件規模は小さく、本格的な海外進出とは言い難いものであった。2022年現在、複数の日本の大手ショッピングモール、大学病院からの引き合いがあり、同社は日本の顧客の要望にあわせて、日本市場向けのアプリケーションの開発を進めている。例えば、日本の経産省が推進するロボット・エレベーター連携インタフェイス定義(RRI)に準拠したエレベータ連動システムを開発するにあたって、日本のオクタロボティクスのプラットフォームを採用した。この事は同社が本気で日本市場に参入しようとしている決意を示していると言えるのではないだろうか。
ゼロコロナ対策などで経済が落ち込む中国市場の次の市場として、日本をサービスロボットの次世代市場だとみなす中国メーカーは多い。優地テクノロジーにとっても日本市場は長年進出を準備して来た重点市場である。同社の悲願がかない、日本進出が成功するかどうかは、今同社が開発しているアプリケーションが、日本のユーザーを満足させられるかどうかにかかっている。年内にリリースされるという同社の日本向けサービスに期待したい。