【考察レポート】世界の事故現場から

ロボティア編集部2022年8月31日(水曜日)

ショッキングなタイトルにしたのには理由がある。我々テック系メディアの記者がロボットに関する取材を続けていると、実に衝撃的なニュースに接する事がある。それらニュースの多くは、たいていは現場の担当者がオフレコで左右を気遣いながら「他のヒトに絶対にいっちゃ駄目ですよ。実はね、、、」という感じでリークされるのだが、それらのニュースを聞くと我々は信じられない思いに呆然としてしまう。あるいは恐怖で身がすくんでしまう。そう、それはロボットという先端テクノロジーが引き起こす事故についてのニュースである。

日本社会ではようやくこの2年、2021年あたりを境に急激にサービスロボットの社会への実装が進んだが、ロボット先進国である米国や、国策でロボット強国を目指す中国では、日本で稼働する何十倍、何百倍もの台数のロボットが稼働している。日本社会ではまだまだ敷居が高い一般公道も走るし、商業施設やビルのエレベーターにも、当たり前のようにロボットが乗降する。そういう社会では、当然のことながら不慮の事故が発生するのだが、記者はここで極めて言いづらい事を告白しなければならない。それは「ここ、日本社会でもロボット事故は相当数、発生している」という事だ。ただしうまく火消しがされており、表沙汰になる事はとても少ない。しかしこれは由々しき事態である。ロボットの危険性を知らずに、ロボットの導入を進める事は、キュリー夫人が放射線被曝の恐ろしさを知らずに、無邪気に実験をしていた悲劇を彷彿とさせる。

ロボットが日本社会に実装されていくプロセスにおいて、思いがけない事故が発生してしまうのは避けられない事ではあろう。しかし、それに巻き込まれる怪我人や、経済的な損害は、出来うる限り最小限であって欲しいと考えるのは、我々日本社会に暮らすものの人情であろう。この連載では世界と日本で発生した数多くの事故のうち、すでに公表されている事例を取り上げつつ、どのような事故が、どのような経緯で発生するのか、それを防ぐために何をするべきだったか、そしてこれからどうするべきかについて、全面的な考察を加えたい。とりあげる事故は以下の5つ。今週より五回連載でお届けする。

①エスカレーターから落下したロボットが人間を直撃
②暴走したロボットが壁や人間、自動車に激突
③ロボットが突然、発火・炎上・爆発
④ロボットがエレベータに人間を監禁したのはなぜか
⑤自律走行車が交通事故(対物・対人)を起こす時