日本で走行ロボットを見かけることは珍しくなくなってきた。しかし、その使い道はどれも配膳や清掃が多く、限定された店舗空間で使われるケースが大多数となっている。
ロボットが店舗から出られない理由に「エレベーター」と「公道」がある。エレベーターに乗って上層階に移動する「縦」の移動と、屋外に出て公道を走行する「横」の移動があり、どちらも技術・費用・安全・責任範囲がネックとなって応用の範囲が狭められている。
近年ようやく推進基準が設けられ、日本でも縦横の問題に着手する動きは出てきているが、課題の多さから各社ロボットは縦指向か横指向かで二分されがちである。
そんな問題に愚直にも果敢に同時に取り組んでいるのが北京真機(Zhen Robotics)だ。
CEOの劉氏は精華大学出身。同大及びチューリッヒ工科大でロボット制御を専攻し、アリババを経て2016年に同社を設立した。公道を走れても人はマンションの下まで取りに行くのか、エレベーターに乗れても施設内しか運べないのか、それは一気通貫のラストワンマイルの解決になっているのか、そんな思いがある。
▲精華大学内のベンチャー企業棟に本社を構える。
設立数年で技術に目途が立ちつつあった一方、ラストワンマイルにはまだ大きな障壁があった。すなわち、既に出来上がっている人のオペレーションにロボットが割って入ることを郵便や物流の関係者は必ずしも快く思わなかったのだ。根っからの技術人間である劉氏の性格も相まって、技術導入に積極的な中国にあっても劉氏は苦心することになる。
そこに韓国が救いの手を差し伸べる。折しもロボットの公道実験の規制が緩和され、赤字脱却の活路をロボット配送に見出そうとしていたウーワ(韓国版UberEatsの最大手)と思惑が一致し、他の企業を巻き込んでの実証実験が始まった。2020年のことである。
当初は敷地内の売店の商品をマンション1階まで配送する範囲から始まったが、今年には公道の移動とエレベーターによるマンション上層階の玄関先までのワンストップ配送が予定され、一定圏内での実用化を視野に入れている。