【すごい無駄遣い】133人に対し45億円、1度は廃止の憂き目にあったパスポートの電子申請(前編)

花園 祐2024年4月27日(土曜日)

(上イラスト パスポート電子申請の告知サイト「政府広報オンライン」より)

2023年3月、日本政府はネット上でパスポートの発行申請を受け付ける、電子申請サービスを開始することを発表しました。これにより、専用アプリを介することで申請者は発券事務所へ赴くことなくパスポートの発行を申請することが可能となり、パスポート手続きの利便性は向上することとなりました。

申請に当たっては、更新であれば専用アプリで自らのマイナンバーをはじめとする諸情報を入力し、顔写真と署名写真を送るだけで済みます。新規発券の場合は、都道府県によって対応が異なるものの、一部府県では上記電子申請に加え、戸籍謄本を簡易書留で送るだけで済むようになっています。

このパスポート電子申請は言うまでもなく政府のDX戦略の一環として推進、実施されたサービスですが、実は遥か昔の2004年の時点で、すでに一度実施されていたサービスでした。ただこの時はわずか2年でサービスが停止されており、システムに投じた費用45億円に対し利用者の数は133人、一人当たりの発行費用では約3400万円にも上るという惨憺たる結果でした。

そこで今回は、なぜ前回のパスポート電子申請が失敗した背景、そして19年の時を経ての再開についての見解をご紹介します。

導入したのはたったの12県のみ

前述の通り、日本における最初のパスポートの電子申請は2004年3月に開始され、約2年後の2006年3月には早くも廃止の憂き目を見ています。廃止理由はこれまた前述の通り利用者が広がらず、費用対効果が低いという判断によるものですが、この場合、なぜ普及しなかったというのが論点となってきます。

一つの原因としては、当然ながら周知不足が挙がってきます。当時、私はこのパスポートの電子申請が行われていたということを全く知らず、廃止を伝えるニュースを見て初めてその存在を知る有様でした。もっともこの点に関しては、私がきちんと情報を把握していなかっただけかもしれませんが。

もう一つの理由として、電子申請に対応というか受け付ける自治体が極端に少なかったという原因が挙げられます。こちらが廃止に至った、決定的要因といっていいでしょう。

当時、電子申請を導入したのは全国でわずか12県しかありませんでした。そのため利用したくても所在地の自治体が受け付けてくれず、結局従来通りに発券事務所へ赴かざるを得なかったそうです。

後編へ続く

花園 祐

記者:花園 祐


花園裕(はなぞの・ゆう)中国・上海在住のブロガー。得意分野は国際関係、政治経済、テクノロジー、社会現象、サブカルチャーなど。かつては通信社の記者。好きな食べ物はせんべい、カレー、サンドイッチ。