こちらの記事は同タイトルの前回記事(前編)の続きです。
費用対効果から見送り
一体なぜ各自治体はパスポートの電子申請に対応しなかったのか。この点について廃止当時、EABuS(東アジア国際ビジネス支援センター) 理事の安達和夫氏が日経クロステックにて、千葉県に見送り理由を尋ねる記事を公開しています。
千葉県側は当時、「電子申請であっても戸籍謄本などの書類を窓口へ送ってもらう必要があることに加え、システムの維持や導入に経費が掛かる」といったことから、費用対効果を考慮して導入を見送ったと回答しています。恐らく千葉県に限らず、他の都道府県も同様の理由で導入を見送ったことは想像に難くありません。
この千葉県の回答に対し安達氏は、対面で申請を受け付ける窓口を多く設けることでも費用が発生するだけに、電子申請導入によるコスト削減効果についてもっと国と意思疎通ができていれば、導入は広がっていたのではないかと述べています。その上で、利用者が少ないからといって廃止するのではなく、公共サービスの電子化推進を目指すためにも維持すべきだったと廃止を嘆いていました。
その安達氏もまさか、サービス再開まで19年の月日を要するとは思わなかったでしょうが……。
再開の決め手はマイナンバー
ではそんなパスポート申請がなぜ、プレイステーション2がプレイステーション5へと切り替わるまでの期間を経て再開されることとなったのか。単純な電子技術の進歩やスマートフォンの普及などもさることながら、決め手となったのはやはりマイナンバーに尽きるでしょう。
初めの電子申請サービスにおいても個人認証を技術的にどう行うかがシステム設計面でネックとなっていたそうです。しかし現在、本人確認と情報の連結を目的としたマイナンバーが他国に周回遅れながらようやく日本でも導入され、これにより本人確認手段とシステムの確立が容易となり、サービス再開の運びに至ったと多方面から指摘されています。
仮にこの通りとすれば、マイナンバーこと個人証明番号の不在こそが、日本の行政手続きをはじめとする社会の電子化を妨げてきた最大の要因であった言えるでしょう。
私が暮らす中国においては現在、様々な行政手続きが電子化されており、対面での手続きはおろかボールペンを持っての署名手続きすら日常で行うことはほとんどなくなっています。これらの手続きの電子化で最も柱となっているのはやはり個人証明番号(外国人の場合はパスポート番号などを使用)で、この個人証明番号を日本は欠いていたばかりに、様々な方面で手続き電子化が進まなかったのでしょう。
とはいえ、パスポートの電子申請再開をはじめマイナンバー導入を皮切りに行政サービスの電子化は今後、さらに広がっていく可能性があります。マイナンバーに関しては現在も否定的意見が強く登録に反対する市民も存在はするものの、セキュリティをしっかり維持することはもとより、マイナンバー利用による利便性が高まれば、自然とその支持も高めていくのではないかと思います。
それだけに日本政府においては、パスポートの電子化にとどまらず今後多様な行政サービスで、マイナンバーを利用した手続きの電子化を進めてほしいものです。特に私のような外国居住者であっても、交付される補助金をきちんと受け取れるようなシステムにしてくれると非常に嬉しかったりします。