20人のAI研究者たちが選ぶリアルでベストなSF小説&映画

ロボティア編集部2015年12月6日(日曜日)

 米IT専門メディア「テックインサイダー」は12月5日、人工知能(AI)を研究している科学技術者たち20人を対象に、SF小説・映画に登場するロボットについてどのような意見を抱いているかアンケート調査を実施した。結果、ほとんどの研究者が“不満”を抱いていることが明らかになった。その不満の理由のひとつは、映画やSF小説に登場する多くのロボットがキラーロボットであること。研究に身を投じている当事者たちからすれば、人工知能ロボットのイメージがあまり思わしくないということだろうか。

 今回のアンケートでは、科学技術者たちが観た小説や映画に登場するロボットのうち、評価しているものを推薦するという質問も設けられた。そのなかで、映画「エクスマキナ(Ex Machina)」に登場するロボット「エイヴァ」が高い評価を受けた。

 エクスマキナは2015年1月に公開されたSF映画で、美しい美貌と冷徹と人間味を備えた女性ロボット・エイヴァが登場する。人と区別することが難しいほど精巧に作られたエイヴァは、自分を製作したエンジニア、プログラマなどが参加するチューリング・テスト(Turing test)で混乱を引き起こす。

 ワシントン大学のカルロス・グエスタイン(Carlos Guestrin)博士は、「エイヴァは、いくつかあるロボット映画の中で、より深いニュアンスを漂わせている」と述べている。というのも、感性を持ったロボット・エイヴァが観客の興味を誘発するだけではなく、将来的にどのようなロボットが登場するかについて現実味を持って予測しているというのがその理由だ。ちなみに、グエスタイン教授は人工知能ベンャー企業「デイト(Dato)」の共同創設者でもある。

素敵な相棒フランクじいさんとロボットヘルパー
photo by 映画「素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー」より

 プリンストン大学でコンピュータサイエンスを研究するジョアンナ・ブライソン(Joanna Bryson)招聘教授は、米国のアン・レッキー(Ann Leckie)氏が書いたSF小説「アンシラリージャスティス(Ancillary Justice)」に登場する人工知能ロボットを高く評価した。同小説は、出版年となる昨年、SF関連の賞を総なめにした。

「小説の中に登場するロボットは、人間と同じようにほぼ完璧に意思疎通が可能なうえ、膨大な記憶力を持っており、将来の人類の生活にどのような影響を与えるか予測させてくれる」(ジョアンナ・ブライソン教授)

 一方、ニューヨーク大学で教鞭を執るアーネスト・デイビス(Ernest Davis)教授は、ポーランドのスタニスワフ・レム(Stanisław Lem)が書いたSF小説「ノンセールビアム(Nonserviam)」を推薦する。(同作は「A Perfect Vacuum」に収録)

 そのほか、科学技術者たちから好評を受けたロボットは、2012年の映画「素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー(Robot and Frank)」の中に登場するロボットや、映画「チャッピー(Chappie)」に登場する、人のように学習し喜びや恐怖を感じるロボットなどである。

 科学者たちの多くは、最近世に出てきている作品に登場する人工知能ロボットが現実性を多分に帯びており、過去の作品とは異なり、将来の状況を正確に予測していると指摘した。

photo by 映画「エクスマキナ」より