ロボット大国・日本の学会と産業ロボット研究

ロボティア編集部
ロボティア編集部

産業用ロボット
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 現在、大学での産業ロボットの研究が少数派なのは、学問的な意味ですでに“枯れた”分野だという認識があったからだとも考えられます。90年代まで大規模な生産工場で導入されていた産業ロボットの基本技術は、定められた位置から目標地点までアームを移動させたり、動作を精密に制御したりすることでした。それらは古典制御理論や、ティーチングプレイバック(教示と再生)などの技術を使用すればある程度達成でき、それらの基本技術を成立させる研究はすでに進んで久しかっただけに、学問ベースで何か手を加えるという余地はあまりありませんでした。

 続く90年代終盤からは、産業ロボットの機能を飛躍させようという動きが始まりました。導入当時の産業ロボットは、教えられた動作を繰り返し、高精度に、素早く、何時間も休まずこなすという機能により有効な戦力となっていました。一方、ロボットによる作業を可能にするために、ロボットの作業環境を徹底的に精密に整えることが必須でした。このため、大企業の大規模な生産システムのもとで同じ製品を大量に作って採算を取るビジネスモデルが、導入の前提条件になっていたのです。

 しかし、90年代終盤になると産業構造に変化が現れ始めました。少品種大量生産から、多品種少量生産に変わり始めたのです。工場の製造現場の方も、人手を使用して器用に取り回しできるような形にシフトされていきました。このような変遷のもとに、産業ロボットも、眼や触覚などのセンサー技術を拡充し、人間とともにラフな環境で作業ができるような能力を求められるようになりました。同時に少子高齢化で労働力が不足し始めたため、産業ロボットを発展させ、より産業構造に適した自動化を達成することが社会的課題にもなり始めたのです。

 そのような変化を受けて、2000年代に入り産業ロボットに変化が現れはじめます。3次元ビジョン、ステレオビジョン、高速カメラなどを搭載し、ある程度ラフな生産ラインにでも適応して作業できるものが製品化されてきました。ただその段階の技術も、学問的には70年から80年代に基礎的なところは確立していたものです。例えば、レーザービーム投射で3次元形状の把握をする様な技術です。それらの技術が、約20年~30年経過して、製品としてものになり始めたのですが、こちらも企業側がブラッシュアップを続けて、信頼性を上げてきたという経緯があります。