ロボット大国・日本の学会と産業ロボット研究

ロボティア編集部
ロボティア編集部

IROS 2015
IROS 2015 in Hamburg photo by avax.news

―産業ロボットは今後、どのような方向で発展を遂げていくのでしょうか?

 学会の大きなテーマの一つとしては、タスクプランニングがあります。分かりやすく言えば、人間が厳密なプログラムを組まなくとも、ロボット自身が人間の作業を“概ね”把握して、作業をこなし、作業計画まで立てるというものです。

 人間が人間に作業を教える際は、「こうゆう形のものを、こうゆう感じで」という風に概要を伝えることができ、ロボットに対するように細かくすべてを教え込むということはしません。そのように、人間に指示するレベルの要求をロボットが解釈、分析できるようにする。また作業の段取りなど、最終的にロボットがどのように作業すればよいかの計画まで立てるのがタスクプランニングです。ある意味、その性能に達すれば究極の産業ロボットと言うことができますが、学会の研究レベルとしても未解決の問題が多く残されています。

 大学や学会としては、そのタスクプランニングなど第三段階以上が、今後の研究の焦点となっています。これは海外でも同じ様子です。今年、ドイツでIROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems=知能ロボットとシステムに関する国際会議)という国際シンポジウムがあったのですが、そこでもタスクプランニングの発表が盛大に行われていました。

―いわゆる究極の産業ロボットを作るアプローチというのは、どのようなものが考えられるのでしょうか?

 まず一つは人工知能などを導入するパターン。いわゆる人間の真似ですね。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)等では、人間の動作を見てロボットが学習するという研究を行っています。もう一つは力技のコンピューターサイエンスで、徹底的に知能作業ロジックを組み上げるというのもアプローチだと思います。

 現時点では、センシングのロバスト性等不足している部分も多いのですが、これからはやはり知能化―作業知能というものをどう発展させるかがより大きな課題となりそうです。

―これまで、産業ロボットの変遷過程や学会における課題の変化についてお話をお伺いしました。その他に、産業ロボットの課題として議論されている点はありますか?

 最近は、産業ロボットをより安全にしようという議論が活発です。これまでの産業ロボットは、スピーディーかつ正確な作業が行えましたが、人間と完全に隔離された柵の中でしか作業ができませんでした。これに対し、少量多品種生産に経済構造がシフトしてくると、人間と一緒に作業しなければならないシーンが増えてきました。

 そこで課題となってくるのは、「ロボットを柵から出して、人間とともに作業させるためにはどうすればよいか」という点です。周囲をセンシングする機能を高めて、人とぶつからない技術、人とぶつかっても危害を最小限にする技術を発展させる必要があります。また、ロボットの関節を柔軟にしたりする技術の追求なども求められます。安全工学の歴史は長いのですが、ロボットの様に動作が多様で複雑な対象に対しては、多くの課題が残っています。

>>後編「夢物語でロボットは作れない、日本の学会とロボット研究」

(取材・文 河鐘基)

細田祐司

 細田祐司氏。日本ロボット学会事務局長。日本ロボット学会は学問領域の進展を目指し、研究発表と技術交流の場を専門家に提供することを目的に、1983年1月28日に創立されました。2014年12月現在、正会員、学生会員の数は約4,100名、賛助会員数は68団体となっています。

 事業の概要として、学術論文とロボットに関連する最新の状況の解説記事の特集を収録した「日本ロボット学会誌」、欧文誌 "Advanced Robotics"の発行、「日本ロボット学会学術講演会」、「ロボティクス・シンポジア」の主催,ロボティクスに関する新しい分野や基礎的な内容を対象としたセミナーなどの企画・開催、論文賞,実用化技術賞,研究奨励賞等の賞を設けることでロボットに関わる分野の学問・技術の奨励、そしてロボット関連の研究専門委員会の活動の支援を行っています。また、国内外の学会等と協力してシンポジウムなどの開催も行っています。IROS、RO-MAN等の国際会議もこれに含まれます。