「未来を注目されるロボット産業が、ビジネス的な成功を収めるためにはどうすればよいか」
そんな問いに対して、立命館大学先端ロボティクス研究センターの韓国人ロボット専門家・李周浩(イ・ジュホ)氏からひとつの提言が出ている。その主な主張の中身は、①ロボットが一般に広く普及するためには価格が低下しなければならないということ。そして②そのためにロボットが広告で収益を得ることができるビジネスモデルをつくるべきという指摘だ。韓国メディア「マネートゥデイ」がその詳細を伝えた。
「新聞が広告で金を稼ぐように、ロボットが広く普及するためには価格を大幅に下げるための収益モデルが必要。ロボットは、Googleなどのポータルサイトよりも、個別にマッチングされた広告を配信するには最適のツールです。人間に最も近い距離にあるロボットは、各種センサなどを通じて利用者の情報を24時間得ることができる。その情報に合わせて、広告を露出するのです。例えば、利用者の動きがいつもより鈍かったり、体温・脈拍・血圧などに変化が起こった場合には、健康食品をお勧めするという具合です」
ソフトバンクが販売しているペッパーの人気は上向きで、現在は販売後に即完売という状況が続いている。が、マネートゥディによれば「価格が19万8000円で、本来の適正価格はその10倍ほど高いとソフトバンク関係者は説明している」そうだ。そもそも、ソフトバンクは先端ICT企業というイメージを強調するために、採算を度外視しているとの見立てもある。ロボット専門家たちは、今後、ペッパーのようなサービスロボットの普及の“最大のアキレス腱”となるのは、「高価な価格」ではないかと予想している。
それらの状況を打破するためには収益モデルを考えだすことが必要で、李教授はロボットを広告プラットフォームとして活用する方法があると提案しているわけだ。
マネートゥディは、「(日本は)現在、65歳以上の高齢者が総人口の26.4%。2060年にはその比率が40%に達する見込み」と指摘した上で、超高齢化社会を迎えた日本では老々介護の事例が珍しくなく、「親を介護するために、毎年、日本のサラリーマン10万人以上が辞表を提出している。これは日本の中産階級の崩壊のひとつの原因となっている」としている。
ここ数年、日本では介護ロボットの開発が大きく取り上げられているが、日本の国家財政全体の問題として社会保障費の支出は増え続けており、ロボット開発に対する政府支援金も湯水のように湧いてくるという状況ではないだろう。介護や福祉分野のロボットは、現在のところ、それ自体が新たな価値を創出することは多くない。日本に散在する社会的課題を解決したりビジネスとして成功させるためには、李教授が例示するように「+αの収益源を作る仕組み」を考え出す必要がありそうだ。
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