米バンク・オブ・アメリカ(BOA)と英オックスフォード大学の研究チームは、今後10年以内にロボットが代替する職業を分析した報告書を発表した。そこには、「スポーツの審判がロボットに置き換えられる確率が90〜100%」と指摘されていた。
現在すでに、スポーツ競技における審判の役割を機械が代替えし始めている。サッカー・バレーボール・テニスなどのライン判定がそれだ。一方で、ロボット審判の領域を広めるべきだという意見も少なくない。アメリカのスポーツ専門メディアESPNのコラムニスト、ダン・ジムボルスキー(Dan Szymborski)が、1月20日に「野球のストライク判定にも、コンピュータを活用すべき時が来た」と主張したことがその一例だ。
ジムボルスキー氏は「審判の判断エラーがメジャーリーグ(MLB)打者をマイナーリーグトリプルAの打者に、またトリプルAの打者をMLB打者にしてしまうことがある。このような変数は取り除かれなければならない」と主張の根拠を明かしている。
米国ではすでに、1950年代に投球判定を行うロボットを開発されている。ゼネラル・エレクトリック(GE)が開発したそのロボットは、電波を利用してボールの位置・軌跡・速度などを検出、分析しスピーカーを通じて判定を知らせることができた。が、日が暗くなると性能が落ち、ハーフスイングを区別できないなど誤動作が起こった。また、投球ひとつを判定するのには300ドルを超える費用がかかることになるため、GEは最終的に事業をあきらめている。
2001年には、ボールの位置データを自動的に収集し、その軌跡を分析するシステム「クエステック(Questec)」が開発された。2003年からは、メジャーリーグの11球場に同システムが設置され、審判の誤審を改めるのに採用されはじめた。しかし、選手と審判の不満が大きくなるにつれ、「クエステック」は姿を消した。「誤審があってもボールの判定は、人がなければならない」というオールドファンの声もまた大きかった。
しかし、そんな紆余曲折を乗り換えながら、ロボット判定技術は確実に歩を進めている。例えばスポーツビジョン社が開発したピッチエフエックス(PITCH f / x)だ。同製品には3台以上のカメラが使用されており、ボールの軌跡を3次元的に解析することができる。昨年、米独立球団サンラファエル・パシフィックスは、実際の試合で同システムを採用。投球判定のために活用した。なおそこでは、ロボット審判が直接判断を下すというよりも、コンピュータが下した判定を人がコールするという方法が用いられている。
また昨年、MLBはミサイル追跡技術を組み合わせた「スタートキャスト(statcast)」を公開した。これはピッチエフエックスより誤差が減ったシステムであり、事実上「ロボット判定」のための技術的な要件をすべて揃えた技術として注目を浴びている。
業界関係者や専門家、そしてファンの中には「それでもまだ判定システムを100%に信頼することはできない」とする人も少なくない。また、「(ロボット審判が登場するとしても)ストライクゾーンの判定だけは審判の主観的領域に属すべき」という主張もある。ロボットと人間が入れ替わるのか、それと互いに能力を発揮しながら共進化していくのか。スポーツ業界にもまた、ひとつの問いが提起されている。
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