2025年「3Dプリンタが自動車産業に45億ドルの価値創出」

ロボティア編集部2016年2月6日(土曜日)

 市場調査およびコンサルティング企業フロスト・アンド・サリバン(Frost & Sullivan)が「自動車産業における3Dプリンティング分析レポート(Executive Analysis of 3-D Printing in the Automotive Industry)」を発表した。

 報告書は、2025年までに3Dプリンティング技術が自動車産業に43億ドル(約5025億円)の価値を創出すると予想した。レポートの主な内容を以下の通りだ。

 現在まだ、3Dプリンティング技術の応用範囲は非常に限られており、少量の部品と生産ツールの制作に制限されている。その主な理由としては、機械と原材料のコストの高さと遅い印刷速度、また「ソフトウェアの最適化において期待に及ばないレベルにある」などの点が挙げられている。つまり今後、材料と機械の価格が下がり、最先端ソフトウェアとの統合、また迅速な印刷スピードを持つ3Dプリンティング技術が登場すれば、自動車の生産とサプライチェーン、アフターマーケットに新たなイノベーションをもたらすことができる可能性がある。

 レポートによれば、2025年までに3Dプリンティング技術は自動車産業の分野で約43億ドルの価値を創出し、生産とアフターマーケットにより深く浸透すると予想されている。

 フロスト・アンド・サリバンのバイループ・ナルラ(Viroop Narla)研究員は、「より廉価な原材料と技術の向上が3Dプリンタの活用をもたらす一方で、特許侵害、製品の欠陥などの問題が今後も引き続き発生するものと考えられる。加えて、総合的な教育や高価なデータおよび通信システムが必要となるため、3Dプリンタ運用の効率を最大化させ、データの損失や破損、窃盗の危険性などを最小限に抑える必要がある」と指摘している。

3dプリンティングされた車
Audiが3Dプリンティングした「Auto Union Typ C」photo by carbodydesign.com

 最近、「カーボン3D(Carbon3D)」な新企業が、最新の3Dプリンティング技術を開発しており、技術的な向上と開発期間の短縮を達成するために、フォードのよう大企業とのパートナーシップを結びはじめている。

 レポートは、3Dプリンティング技術はOEM(委託者ブランド名製造)各社とサプライヤーが、複数の場所で印刷・生産することを可能にし、待機時間および全体的なコストを削減すると指摘。最終的に、ユーザー各自のニーズに合ったカスタム部品の設計・印刷を実現するのに資するだろうとしている。

 2015年には自動車産業3Dプリンティングアプリケーションの90%がプロトタイプ用であり、残りの10%だけが生産用だった。しかし、既存の生産と3Dプリンティングに使われる原材料(プラスチックとポリマー)の価格差が40%低下すれば、プロトタイプ用に偏っていたアプリケーションも生産用に傾くだろうとした。

 ナルラ研究員は「炭素繊維と金属粉末、チタンなどの画期的な原材料に支えられれば、プリントされた製品が、機械的にもしくは化学的、熱的モデルの面で根本的な改善を成し遂げることができるだろう。加えて、品質とより良い製造工程に焦点を合わせたマシンが、優れた耐性とディティールの表面仕上げを備えた製品を生み出し、後処理に必要も低くなることが期待される」と述べている。