昨年2015年、米国のロボット注文および出荷件数が過去最高を更新していたことが明らかになった。
英メディア「デイリーメール(Daily Mail)」は、「ロボット産業協会(RIA)」の資料を引用。2015年に、北米企業が前年比14%増となる3万1464台のロボットを購入したと報道した。ロボットの購入にかかった費用は合計18億ドル(約2000億円)に達した。実際に出荷されたロボット台数は前年比10%増の2万849台、16億ドル(約1800億円)規模だ。また現在、米国内の工場には26万台のロボットが稼動していると推定された。これは日本と中国に次いで3番目に多い数だ。
なお昨年、米国におけるロボット注文件数および出荷件数は史上最高値を更新したが、さまざまな団体や機関から公表されている懸念とは異なり、失業率は10年で最も低い数値を記録した。ロボットの導入で失業率が高くなるという見通しとは相反する結果となった。
米国でロボット導入が増加している背景のひとつとしては、自動車産業の復興の影響があると指摘されている。自動車メーカー受注は、昨年19%増加している。また非自動車業界でも、昨年はロボットの注文が増加した。半導体および電子産業では35%ほど注文が増加しているとの指摘だ。
また昨年はいくつかの特定分野で、ロボット使用率の高まりがみられた。まずメッキおよび分配用ロボットの使用が49%増加したのをはじめ、マテリアルハンドリング(Material Handling)、スポット溶接の分野で、それぞれ24%、22%ほど使用率が高まっている。
RIAは今回の調査結果と関連して、米国内でのロボットの普及が失業率の減少と並行的な関係にあるという主張を展開した。ロボットの導入普及にもかかわらず、米国の失業率が高まらず、むしろ低下したという分析だ。昨年、米国の失業率は4.9%で、2008年以降、もっとも低い数値を記録している。
RIAのジェフ・バーンスタイン(Jeff Burnstein)会長は「現在のロボット産業には、これまで以上に多くのチャンスが存在する(中略)ロボットの普及がロボットプログラム、設置や保守などの分野を中心に新たな雇用を創出するだろう」と話している。
バーンスタイン会長はまた、自動化が新しい仕事を作ることに寄与し、ロボットと自動化がなければ企業が事業を営むことができないと指摘している。一方、スイス・ダボスで開かれた「世界経済フォーラム」では、ロボットと人工知能の導入で、今後5年間のうちに500万の雇用が消えるという悲観的な見通しが出ている。
photo by ABB