クアルコム社長「ポストスマートフォン時代の新産業」に言及

ロボティア編集部2016年2月25日(木曜日)

「今後5年間で、スマートカーやIoTなど新事業の売上高の伸び率が、スマートフォンのそれを追い越すだろう」

 クアルコム(Qualcomm)社のデレク・アーベルレ(Derek Aberle、上写真)社長は23日、「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2016」が開かれているスペイン・バルセロナで、海外メディアの取材にそのように語った。

 今年のMWCのテーマは「モバイルがすべて(Mobile is everything)」。クアルコムは今後、スマートフォン分野に続き、スマートカー、IoTなどの新市場も積極的に攻略するとしている。

 アーベルレ氏はまず、スマートフォン市場の成長鈍化について以下のように言及している。

「まだ完全飽和状態ではなく、成長が依然として強い方だ。今後5年間では、85億台のスマートフォンが売れる見込みもある。世界のスマートフォンのうち、第4世代(4G)移動通信LTE技術を適用したチップセットが搭載されたスマートフォンは14%に過ぎない。成長余力が大きい。メーカーはスナップドラゴン820など、ハイエンドチップセットの導入を増やしている。革新的な余地も多い。カメラグラフィックスの強化、電力効率の向上、機械学習(マシンラーニング)など新しい技術の適用も視野に入れ、研究開発(R&D)に邁進している」

 スマートフォン以外の市場が成長する見込みについてはどうか。アーベルレ氏は言う。

「多くの産業がモバイル技術を導入している。自動車が代表的な例だ。スマートフォンに適用するために開発された多くの技術が、自動車に活用され始めた。自動車がスマートフォンのようにひとつの接続デバイスとなっているからだ。 Wi-Fi、Bluetoothなどの通信技術はもちろん、機械学習などのコンピューティング技術、各種センサーを車載インフォテイメントシステム(Infotaimant System)に適用されている。クアルコムは、その市場での成長の機会を探している。自動車だけではなく、ウェアラブル機器、ドローン、スマートホーム、スマートシティ、IoTなども同様である」

 今後、構想している新事業のうち主に集中する分野を尋ねられると「すべての分野に機会がある」とし、スマートフォン市場との比較から今後の戦略について言及した。

「まだ新事業の分野はスマートフォン市場ほど大きくない。しかし、今後5年以内にスマートフォン市場と同じくらいチャンスがあるものとみている。昨年のチップセットの売上高の10%が、スマートフォン以外の事業から発生している。今後5年間では、新事業の成長率がスマートフォンよりも高いと予想している。4G、5Gなど移動通信網の進化とともに成長はより強くなるだろう。ただ、企業が新技術に投資することは難しいことだ。多くの企業がリスクや負担の増加を避けるために新技術に積極的に投資しない。リスクを取って先制的に投資することが、クアルコムの競争力の源泉である。クアルコムは毎年、売上高の20%を着実にR&Dに投資している」

 今回のMWCで注目を集めた5Gとバーチャルリアリティ(VR)については、次のように示唆した。

「まず、5Gが何であるか定義する必要がある。まだ標準化などが達成されていない。そのためクアルコムとしては、さまざまなパートナーと協力して機会を模索している。クアルコムは、有利な立場にある。4Gの技術競争力が、5Gでも主導的な地位を確保するのに役立つはずだ。VRは、高精細グラフィックと高性能コンピューティング技術などが必要である。この分野にも積極的に投資している」

 さまざまな新産業の芽が生まれ、ポストスマートフォン時代が始まりつつある。アーベルレ氏が語るクアルコム社の現在と、今後の戦略を読み解く限り、社会のロボティケーション(ロボット化)は着実に進みつつあると言えそうだ。

photo by Qualcomm