人工知能ブームから考える”人間の脳の不思議”

ロボティア編集部
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サヴァン症候群
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 一方で、記憶の世界記録保持者たちをはるかに上回る記憶能力を有することを確認されているのが、サヴァン症候群(savant syndrome)を抱えた人々である。サヴァン症候群は、自閉症や知的障害を持った人々の一部が、特定の分野に優れた能力を発揮する症状をいう。名前や日付はもちろん、複雑な情景の細部まですべてを覚え、また一度見たものを後に正確に描き出すなど、超人的な能力を示すケースもある。

 サヴァン症候群が発生する経緯には謎が多い。ほとんどは先天性だが、特定の機会をきっかけに症状が出る場合もある。10歳の時、左頭部に野球ボールがぶつかり、後天的にサヴァン症候群を発症した人もいる。

 いわゆる普通の人の知能は、低レベルの作業である記憶よりも、高いレベルの作業である概念的思考を行う。例えば、草原でライオンを見た際、その鼻や口に気を使うのではなく、全体的にライオンだということを認識、危険を回避するという具合だ。

 しかしサヴアン症候群に苦しむ人は、細かい内容や詳細についてはすべて認識・記憶するが、反対に大きな概念になると理解することができないという。例えば、ハンドルやワイパー、ヘッドライトなどの部分は理解できるが、車という全体的概念については認識することができない。

 オーストラリア・シドニー大学のアレン・スナイダー(Allen Snyder)教授は、一部の人々の脳内には“サヴァン”があり、適切な技術さえあれば、これを活性化させることができると示唆している。

 サヴアン症候群を抱えた患者を対象とした実験では、磁場を作るキャップを頭に装着して、左前頭葉の神経活動を抑制した結果、図を描く能力やカードの枚数を数える能力が高まるということが確認されているという。ただし、記憶力を検証するテストは、比較的簡単なものであり、今後さらに改善される必要に迫られている。このよう実験や結果には懐疑的な声もある。が、一方で今後、脳の構造の解明に役立つという評もあり、賛否両論といった状況だ。