「伝染病との戦争」にドローンが出陣する。4月3日、雑誌「ポピュラーサイエンス」などが報じたところによれば、エチオピア政府が現在、「対ツェツェバエ・ドローンプロジェクト」を進めており、数ヶ月以内にツェツェバエを撲滅するためにドローンを飛ばす予定だという。
同プロジェクトは、ドローンと不妊虫放飼と呼ばれる害虫駆除の方法を組み合わせたものになる。ドローンから放たれた不妊雄ハエが雌バエと交尾するともはや繁殖ができず、個体数が減ることになる。
プロジェクトを牽引するのはスペインのドローン企業エンベンション(Embention)と国際原子力機関(IAEA)。一方、エチオピア家畜部、国連食糧農業機関がサポートに回る。なお、 IAEAは雄のツェツェバエに放射線をあて、去勢するために参加しているという。
アフリカの吸血ハエ・ツェツェバエは主に、サハラ以南のアフリカ中部に主に生息しており、人間や動物の血を吸うことで生きる。問題はトリパノソーマ(寄生虫)に感染した人や動物の血を吸った後に他の人や動物の血を吸うため、いわゆる“睡眠病”の感染源になっているという点。人間が睡眠病にかかると、発熱、頭痛、関節の痛みを誘発し、最悪の場合、死亡することもある。また、家畜が感染すると筋肉麻痺が起こり、こちらも死に至るそうだ。
世界保健機関(WHO)によると、睡眠病の感染は2000年に2万6000件。ただし、2013年には5967件まで減少しており、すでに撲滅の段階に入ったと考えられているという。しかし、エチオピアではツェツェバエが生息しているため、人間や家畜が接近できない肥沃な領土が22万㎢もある。今回、ドローンが集中的に投入されるのもこの地域である。農業はエチオピア国内総生産の半分近く(約43%)を占めており、全体の雇用の85%を創出している。
エチオピアは、数年前から飛行機で去勢された雄ツェツェバエを放つ作業を進めてきた。ただし、ドローンを使えば有人飛行機よりも低く長く飛ぶことが可能であり、去勢されたハエをより均等に放つことができると期待されている。熟練したパイロットは不要で、コストも削減も魅力だ。
エンベンションは固定翼式のF300ドローンを投入し、300m上空から、一台あたり5000匹の去勢された蝿を放つ予定である。今回のプロジェクトが成功し、効果が挙がれば、ドローンをマラリア蚊退治にも投入する計画だとしている。
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