低価格を武器に世界の市場を狙う中国製農薬散布ドローンが、韓国で次々に“農業機械”として登録されている。これは、韓国政府の融資支援を引き出すための措置だそうだ。ただでさえ安価な中国製ドローンに対して融資支援体制が拡充されれば、韓国市場を狙う世界のドローン、無人機開発企業にとっては“悪夢”以外の何ものでもない。価格競争力で大きな差を開けられることになる。
5日、韓国業界関係者によって、中国企業が防除用(農薬散布用)ドローンを、韓国の「政府融資支援対象農業機械」として登録する事例が相次いでいることが明らかにされた。防除用ドローンを農機として登録することにより、購入者は販売価格の80%の範囲内で政府融資を受けられる。ドローンを購入しようとする農業関係者側からすれば、先行投資の負担を抑えることができるという訳だ。中国製ドローンはもともと低価格だが、その購入代金でさえ政府融資が受けられるとなれば、中国ドローン企業にとってはさらなる追い風となる。
DJIは防除用ドローン「AGRAS MG-1(アグラスエムジー1)」はすでに、昨年に韓国で融資対象としての登録を終えている。製品自体はまだ輸入されていないが、韓国国内輸入代理店が発売準備の段階で登録を済ませたという。今月の発売を控え、価格と形式名を変更し再登録申請も終了した。既に一度登録されているため、大きな問題がなければ融資モデルとして決まるものと見られている。
輸入会社であるオートワールドは、同製品のパッケージ価格を日本円にして約200万円台と定めている。政府融資を受ければ、わずか数十万円で購入することができる。高い費用対効果と最先端の機能を有しており、業界にかなりのインパクトを与えると期待されている。
DJIの他にも、中国建設機器メーカー・ズームライオン(Zoomlion=中連重科)の防除用ドローンも、近いうちに韓国政府の融資サポートモデルに含まれる見通しだ。輸入会社GLコリアが先月、農業機械として登録申請を済ましている。ズームライオンは最近、防除用ドローン市場に進出、製品を販売している。なお、GLコリアは2つの機種を登録申請した。「Z-Lion-10」、「Z-Lion-18」は、それぞれ10ℓ、18ℓの農薬を積載して飛行する。登録申請書類上の価格はそれぞれ2500万ウォン(約250万円)、4500万ウォン(約450万円)だった。DJI製品と同様に超低価格と言えそうだ。特に搭載容量18ℓクラスは、韓国製防除用ドローンを凌駕する性能水準だそうだ。
これらの製品が政府融資を受けることになれば、防除用ドローン普及が一気に進むはずだ。ちなみに、韓国製防除用ドローンは6000万〜7000万(約600万円~700万円)で、中国製よりも価格が高い。
政府融資支援対象機種の審査は、農林畜産食品部が所轄。昨年から、農薬散布用ドローンを「無人航空防除機器」に分類し、融資対象に含ませている。現在、4月までに登録申請されたモデルを審査中で、韓国製と外国製は区別なく審査するとしている。
「重量12㎏以上で、航空法上の安全性の認証を受け、農業用に認定されれば、詳細審査を経て、融資サポートモデルに含めることができる(中略)現在、国産製品と外国製品を区別して審査することはできなくなっている」(農林畜産部関係者)
もともと、韓国で農薬散布用無人機として活躍してきたのは、日本のヤマハ発動機が開発した機体。14年9月の段階で195機が導入されていた。中国企業が低価格や政府支援を武器に進出を強めれば、韓国市場における農薬散布用無人機の市場に変化が現れるのは間違いなさそうである。
AGRAS MG-1 photo by DJI