白熱する米大統領選「ビッグデータ戦争」の様相を呈す

ロボティア編集部2016年5月30日(月曜日)

 米国で激しく展開されている大統領選挙が、“ビッグデータ戦争”の様子を呈している。29日、英メディア・ガーディアンなどが指摘したところによると、共和党と民主党の両党立候補者は、ビッグデータを使用して個人情報を収集。投票者の性向を把握し票管理に乗り出しているという。

 大統領候補が有権者のビッグデータの管理に力を注ぐのは、2012年の米大統領選挙の時、オバマ現大統領が有権者カスタム戦略「マイクロターゲティング(microtargeting)」が大成功を収めたからである。「マイクロターゲティング」とは、有権者の性別・年齢・居住地、興味などを把握し、選挙に役立てるビッグデータシステムおよび戦略の総称だ。当時オバマ陣営は、このシステムを通じて選挙資金調達に成功。大統領に当選した。

 今回の選挙では、その「マイクロターゲティング」がアップグレードしており、民主党共和党両党の戦いはさらに熾烈に。過去の選挙よりも多くの情報を蓄積し、有権者の動向をより正確に追跡・分析し選挙戦略に活用しようとしている。共和・民主両党は、投票者情報を蓄積して処理することができる巨大なデータベースを稼働中である。そのなかには、有権者の過去の選挙関連の情報がすべて入力されている。例えば、過去の選挙で投票をしたかどうか、また投票をした場合はいつしたかなどだ。

 そのほかの代表的な項目には、人口統計データ、職業、政治的あるいは慈善団体への寄付事例、団体の活動、住宅・自動車・ボートなどを保有しているかどうか、ライセンスや許可の取得事例、雑誌の購読履歴、選挙出馬キャリアおよび政治的性向などが含まれる。このような広範な情報蓄積が可能なのは、米国の選挙法上、有権者登録と選挙記録の公開が許可されているからだ。民主・共和両党は合法的に、許可された投票者情報に基づいて、電子商取引の方法を活用し、情報を取得・分析を行っている。

 なお、マイクロターゲティングで使用されるのは、ダイレクトマーケティング(direct marketing)の広告手法だ。企業は広告に触れる消費者を対象に、様々なイベントを実施し、消費者に関連する動向、個人の性向、要件など情報を蓄積しているが、現在は大統領候補がこれを積極的に活用している。

 候補者が運営しているウェブサイトを通じて接触してきたネットユーザーの意見を収斂し、また、将来の有権者の動向を分析しつつ、選挙関連の個人情報を大量に蓄積している。もちろん、伝統的な調査活動も健在。典型的なのは、世論調査要員、ボランティアを使って有権者にアンケートを採る方法だ。ただ、このアンケートにも変化が表れているという。

 過去のアンケートでは、どの政党、どの候補を支持するかが、質問内容のほとんどだった。しかし、「マイクロターゲティング」では、質問の内容が具体的かつ多様化した。例えばどのような候補者を推薦するのか、または相手の候補に勝つためにどのような戦略を立てるべきか真剣に尋ねる。最近では、回答者の階層を広げて、そのひとつひとつをグループ化している。特定の職業や属性をターゲットに集中的な調査をしているのだが、徐々にその範囲を狭め、質問の内容もより細かく専門的にしていくという寸法だ。

 両党の候補者の間ではビッグデータの確保競争が激しくなった結果、有権者との新しい関連性や事実が明らかになっている。例えば、カリフォルニア州に居住するラテン系有権者の場合、若い子供たちに仕事を確保してくれることを強く候補者に望んでいる。

 銃関連の世論動向もあらわれる。銃所持者の多くは、銃所持を規制しようという候補者の主張に強く反発していることが分かった。このような調査結果は、両党の候補者陣営の選挙戦略にすぐに反映される。

 結果的に、有権者グループや個人を説得する候補者たちの発言力が増す。このようなビッグデータ競争がより激しくなるなか、選挙専門家たちは「マイクロターゲティング」で蓄積した情報の深さが、選挙当落を決めるとまで予想している。

 両党の候補者が、どのような情報をいかに蓄積し、またどのような方法で分析しながら有権者を包摂していくいくのか。その方法について、世論の関心が集中している。今後、ビッグデータが威力を発揮する大規模な情報戦は、さらに複雑かつ熾烈さを増していくと予想されている。