ビッグデータで街の動きをリアルタイムに捕捉する「WindyGrit」…SNS投稿や警察・交通情報など分析

ロボティア編集部2017年6月30日(金曜日)

 街で起きている出来事を逐一知ることができれば、そこに住む人々の生活の質を向上させることができる。そんな“街を見通す機能”を実現したものに、ウィンディグリット(WindyGrit)がある。これは、米国シカゴ市で稼働しているアプリケーション。ビックデータを使用し、都市の「どこ」で「いつ」イベントが発生しているか、リアルタイムで確認できるというシステムだ。

 ウィンディグリットのアイデアが登場したのは、2012年のことだった。当時、シカゴ市ではNATOとG8サミットが予定されていたため、市長として在任中だったラムラーム・エマニュエル氏は、都心部で起きていることをすべて把握し、かつ来賓や訪問者の保護をする必要に駆られていた。そのような背景から開発されたのが、ウィンディグリットだった。

 シカゴ市ではその後、街で起きているすべての問題を把握するため36のデータソースを選別。MongoDBに統合した。そのデータソースには、911回線、非緊急311回線、事業者登録証、建築物違反、ツイート、交通情報、天気情報、緊急車両情報、環境へのクレーム情報などが含まれる。現在、それらデータはマラソンルートの策定、交通事故、犯罪活動、病気の発生、薬物の過剰摂取などあらゆる政策課題を解決するために活用され始めているという。

 例えば「食品安全性検査の効率改善」も、ウィンディグリットが活用されようしている領域のひとつだ。シカゴ市には36人の衛生調査官が配置されているが、対してレストランの数は約1万6000店もある。リソースを上手く配分する効率的な調査計画が必要だが、そこでウィンディグリットの予測分析機能の出番となる。

 ウィンディグリットには、すべてのレストランが地図上に点で表示され、マウスを置くと過去の違反の種類など「店舗データ」が提供される。また、直近の調査で安全検査に合格できなかったレストランをチェックしたり、頻繁に問題が発生する地域を把握することも可能となっている。加えて、天気、窃盗の多さ、衛生の問題、苦情、近隣の酒類もしくはタバコ販売許可など、追加のデータソースが統合されていて、どのような因子が「食の安全問題」に直結するか、正確かつ効率的に知ることができるようになっているという。

 次いで、システムに統合されたマシンラーニング(AI)が、安全検査に合格できない可能性が高いレストランを分類することを支援する。衛生管理者はそれらデータを利用して、検査計画の優先順位を設定。リスクの高い店舗にだけ、衛生調査官を派遣するという仕組みだ。

 シカゴ市のチーフ・データ・オフィサーであるTom Schenk Jr氏は、衛生検査について「8週間の(調査)期間中、重要な違反を発見するのにかかる平均時間を1週間以上短縮することができた」とコメントしているが、街を見通すウィンディグリットの恩恵はすでに小さくないようだ。

 またウィンディグリットは、公衆衛生上のリスクを軽減するためにも使用されている。夏のシカゴには、頭痛、嘔吐、下痢、最悪の場合は死亡の原因となる西ナイルウイルス(West Nile Virus)を持った蚊が繁殖する。そこでシカゴ市は、ウィンディグリットを用いて、市内189カ所に設置された蚊捕獲用トラップのうち、最も多く蚊を捉えたトラップを地図上に表示。それらデータを利用し、病気の拡散を制限する計画を策定した。

 ビックデータを使って街の課題を解決するウィンディグリットの今後に注目したい。

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