マクドナルドがロボット導入で世界的に人件費を削減!?

ロボティア編集部2015年8月20日(木曜日)

日本では、異物混入事件などで人気離れが著しいマクドナルドだが、世界では人件費問題でやり玉に挙げられることが増えている。特に米国ではその傾向が顕著である。そんな、マクドナルドにロボットスタッフを導入する計画があるとの情報があり、物議を醸している。

米国のファーストフード業界の最低賃金が15ドルに大幅に引き上げられる予定だが、雇用主が賃金の負担からロボットを導入する選択肢を選ぶことが予想され、最低賃金の引き上げはおろか、大量かつ新たな失業が発生する可能性が浮上している。

ワシントンポストは8月16日、「最低賃金引き上げにより、オートメーション化された店舗が増えるかもしれない」というタイトルの記事で、人件費の上昇圧力を受けているファーストフード業界が、人間の代わりにロボットを採用することを検討中だと報道した。

現在、ニューヨークのファーストフードレストランの従業員の最低時給が15ドルまで引き上げられ、他の地域でもそれに続く動きが出てきている。7月1日から、米国にある1500店舗のマクドナルド直営店スタッフ9万人の最低時給は、平均9.01ドルから9.90ドルに上昇し、2016年末までに10ドルを越す見込みだ。

これらの最低賃金の引き上げに伴うコストの上昇に対して、マクドナルドは人件費削減のために自動化を進め、最終的に従業員削減に突入するとの見通しが出ている。実際に、米ファーストフード業界では、人件費が占めるコストが全体の約30%に達し少なからぬ負担となっている。

マクドナルドは最近、米国やオーストラリア・香港・韓国など一部の店舗で、無人端末機を導入。これは、顧客が自らメニューを選択して決済することができるシステムだ。マクドナルド側は、顧客が望むメニューを直接選ぶことができるようするという建前を発表しているが、ウォールストリートジャーナルはこれに対して、ロボットや自動化による人件費の削減が目標と報道した。

ワシントンポストは「すでにいくつかのファーストフードチェーンが、ロボットの導入を控え水面下の作業に入った」とし、「ロボットが本格的に人間にとって代わられる場合、330万人のレジスタッフ、300万人の調理担当者など、240万店の従業員の仕事が脅かされる可能性がある」と伝えている。

ピザフランチャイズ企業「ペルソナピザ」のハロルド・ミラー副会長は、ワシントンポストに「最低賃金の上昇は、飲食業界の収益構造をひっくり返す」と指摘している。また、「従業員に多くの賃金を与え長く雇用するためには店舗側が存続する必要があり、最終的にロボット導入を許容するしかなくなるだろう」と予想した。

この他にも、テーブルに注文用のタブレットを設置しドローンに配膳をまかせるなど、ウェイターの雇用も減っていくのではないかと予想されている。

一方で、最低賃金の上昇は、ファーストフード業界の自動化と従業員の大量失業をもたらさないだろうという見通しもある。ファーストフードチェーン「ファットバーガー」のアンドリュー・ウィエーダーホーン社長は「販売を促進する最高の要素は、やはり人間」とし、「食卓のタブレットは質問を聞いたり、おすすめを判断したりはできないでしょう」と述べた。加えて、「お客様は売り場に来て、『これをください』と人に言いたがるもの」とし「接客業界で、ロボットが人材を置き換わるという主張は前提から間違っている」と述べた。

米全国飲食業協会首席副会長であるハドソン・ライル氏は、「ファーストフード業界は接客業であり、高度な技術環境で顧客と従業員の親密度をどのように高めるかが課題となるだけ」とした。また「顧客に差別化された体験を提供するのがサービス業」と話し、「飲食店経営者はこれを肝に念じなければならない」と強調した。

ちなみに、これまでも急激な技術の開発があったが、米国のファーストフード業界の労働者数は、大きな影響を受けていないことが明らかになっている。米国労働統計局によると、自動化を大幅に促進する情報技術(IT)が急激に発達した過去10年間の間、ファーストフード店の従業員平均数は17.16人から15.28人と、約2人しか減少していなかった。