6月に中国・深センで開催された第5回「ITS EXPO(International Intelligent Transportation System and Location-based Services expo)」では、コンシューマー向けドローンの輸出が中国で爆発的に増えていることが明らかとなった。また深セン税関が発表した統計資料によると、2015年に深センから輸出されたドローンは金額ベースで30.9億元(約450億円)となり、2014年比で7.2倍になったという。
新華社(6月19日付)によると、深センドローン協会会長の楊才氏は、「中国のコンシューマー向けドローン産業は急速に発展しており、一部の中国メーカーはすでに世界のドローン市場をリードしている」と述べた。
英誌『エコノミスト』はDJIの「ファントム(Phantom)」シリーズを「ロボットの歴史の中で今まで最も重要な製品のひとつ」と論評し、米誌『タイム』はファントム2は「2014年の10大テクノロジー製品」に選出した。DJIのほか、艾特(Art-Tech)、一電(AEE)、科比特(MMC)、九星智能(Nine Star)などドローンを製造する企業は世界に向けて輸出を拡大している。
さらに業界の専門家は、ドローンと既存の産業と融合していくことで、新しな需要を開拓していけば、ドローン産業は中国経済にとっての“翼”になると指摘。最近では中国ECサイト最大手・京東(JD)がドローンによる荷物配送のテスト運用をスタートさせ、倉庫から農村部のサービス拠点への商品配送の実現に向けて動き出した。京東の目標は、「ECの最後の1km」と言われる農村部へのECサービスを充実させることだ。
一方、ドローンによる農薬散布にも期待がかかっている。華南農業大学工程学院の周志艶教授は、「統計資料によれば、ドローンによる農薬散布はすでに中国24の省で行われており、150以上の農業集団が187機種のドローンを採用して使用している。2016~2020年の期間で、農薬散布型ドローンの市場規模は300億元(約4500億円)前後になる」と述べている。
空撮、ホビー、農業、セキュリティ、防災などがドローン市場の最重要領域だ。中国調査会社大手「iReserch」が発表した「2016年中国ドローン産業研究報告書」によれば、中国の小型商用ドローン市場は快速成長期に突入し、2025年までに年率50%以上の成長を続け、市場規模は750億元(約1兆1250億円)になると予測している。
ドローンという産業が中国経済の新しい“翼”になるためには、管制システムの構築や関連法の整備なくして実現できない。「関連法の整備があってはじめて、ドローン産業は発展する」――中国国家体育総局航空管理センターの王雷副主任もこう述べたばかりだ。