スポーツなどのトレーニング分野に、ロボットや仮想現実(VR)などのテクノロジーが進出しはじめている。海外メディアによると、ピッツバーグ・スティーラーズ、ロサンゼルス・ラムズ、ボルティモア・レイブンズなどアメリカンフットボールチームが、今月に入って、トレーニングキャンプにロボットを採用したという。
各チームが導入したのは「MVP(Mobile Virtual Players)」という名称のロボットだ。72〜81kgの体重を持っており、アメリカンフットボールのピッチで、毎秒約7m動くことが可能となっている。価格は1個8000ドル(約84万円)。
各チームの選手たちは、それらロボットを相手に、実戦さながらのトレーニングを進めているという。
ピッツバーグ・スティーラーズは5月、Webサイトを通じて、人間の選手とMVPが訓練する様子を公開した。同時期には、ライバルチームであるボルティモア・レイブンズが、このロボットの採用を密かにテストしていたとも伝えられた。
そのニュースが伝えられ後、アトランタ・ファルコンズ、グリーンベイ・パッカーズ、シカゴ・ベアーズなど他のチームも、ロボット導入を検討し始めた。最初は半信半疑だったそうだが、練習現場ではフットボールの高度な技術を習得するためのツールになるという確信が生まれ、アメリカンフットボールのチームの大半が、我先にとMVPの導入を急ぎはじめた。
「NFLのほぼすべてのチームが、MVPの導入を検討している(中略)NFLに参加しているアメリカンフットボールチームの未来が、このロボットにかかっているようだ」(アメリカンフットボールリーグ(NFL)で活動するトレーニング関係者)
MVPの性能がはじめて証明されたのは、ニューハンプシャー州のダートマス大学でのことだった。同大学のフットボールチームは、ロボットを導入した訓練で選手たちの能力を引き上げることに成功。昨シーズンには、トレーニング中に負傷を負うというハプニングに見舞われることがなくなり、また試合中の防御率は、米大学チーム中で最高を記録した。
アメリカンフットボールにおけるロボットの導入、そしてその成功は、スポーツとトレーニングの在り方を大きく変える可能性をはらんでいる。仮想現実やデータを駆使すれば、試合中に起こりうるであろう状況をリアルに再現することができ、選手たちは、より具体的に対処能力やパフォーマンスを発揮するための能力を磨くことができる。
MVPにはラグビー用の機体も用意されている(動画)。ラグビーではすでに、ドローンを使った空撮で陣形を確認し、戦術をブラッシュアップさせる試みが功を奏している。今後、ロボット×スポーツという領域の可能性は、さらに広がっていくことはまず間違いなさそうである。