労働者の人件費上昇で競争力を喪失しつつある中国の製造業が、産業用ロボットへの依存度を高めている。ウォールストリートジャーナルなどのメディアが、その実情について報じた。
デル(DELL)やレノボ(Lenovo)、また日本のパナソニックなどに、PCをはじめとした製品を納品している蘇州ビクトリー(蘇州勝利精密製造科技股彬有限公司)は、人件費の上昇による労働者の離職率増加を受け、2年前からロボットへの投資を増やしている。今年も、ドイツのクカ(Kuka)から160台のロボットを購入することを決めた。
「安くて、懸命に働く労働者から利益を享受した時代は去った(中略)一人っ子政策の影響もある」(蘇州ビクトリーのガオ・ユージェン(Gao Yugen)会長)
経営コンサルタント企業・ボストンコンサルティンググループの分析によると、中国の労働者の賃金は、2000年の時点で米労働者の30%水準だったが、昨年には64%まで上昇している。また国連の統計によると、中国の労働者は2010年に9億人とピークに達し、その後、減少傾向に。 2050年には、8億人まで減少すると見られている。
そうしたロボットと労働者の代替が進む中国は、2013年に世界最大のロボット市場になった。昨年、中国メーカーが購入したロボットは6万7000台で、全世界の販売量の4分の1に迫る勢いだ。2018年には、15万台のロボットが発注されるとも予想されている。
一方で、自国内でロボット製造技術を確保しようとする動きも目立つ。中国家電大手ミデアグループ(Midea Group)は、クカを買収。現在、株式の86%を確保している。
これまで、製造ラインに産業用ロボットを投入する業種は重工業が中心となってきた。しかし昨今では、ロボットが細かい部品まで扱うことができるようになったため、より繊細かつソフトな作業が必要とされる、家電、衣料メーカーなどにも導入され始めている。
中国における労働者からロボットへの代替は、世界的な経済にも影響を与える可能性が高い。現在、上記以外の、より広い分野でも利用できる産業用ロボットの開発が進んでいるため、今後の去就はさらに見逃せないものとなりそうだ。