近年、世界中で懸念されている「スマホ症候群」。スマートフォンやタブレットなど、電子機器を長時間にわたり同じ姿勢で操作することで起こる現代病を指す言葉で、眼精疲労やドライアイ、肩こりや首 凝り、手のしびれや伳鞘炎による肘や手指の痛みなど、その症状はさまざま。
通常、スマートフォンは見下ろした体勢で操作をすることが多い。この時、頭の重さが首に負荷をかけているため、短時間なら問題なくとも、長時間続けることで筋肉への負担も大きくなる。つまり、従来とは異なる姿勢が原因で筋肉が張ってしまい、体に不調をきたすケースが多いようだ。
さらに恐ろしいことに、知らない間にどんどん症状が進行し、首や肩こりを放置すれば頸椎椎間板ヘルニアにつながることもあるのだとか。本来ならば、頸椎椎間板ヘルニアはラグビーなど、首に負担のかかるス ポーツをする人に発症することが多いと言われている。ところが最近では、猫背や歩きスマホなどによる姿勢の悪さも、原因となりやすいことがわかっている。
韓国のスタートアップ企業『ナム(NAMU Inc)」が開発したウェアラブルデバイス「アレックス(ALEX)」は、正しい姿勢をサポートしてくれる製品だ。こちらはソウル市にある、脊髄治療専門のモコリ韓方病院と共同開発された。
同製品はネックバンド型ヘッドホンのように、耳にかけながら首の後ろに着用する。首にセンサーを取り付けることで、リアルタイムで首の角度や姿勢を分析し、一定時間偏った姿勢でいると、振動や警告アラームで 知らせてくれるというもの。また、専用アプリと連動させると、姿勢の変化の記録や、警告アラームを発するまでの時間やアラームのバイブレーションの強度が設定できる。
姿勢の変化はリアルタイムで表示されるので、スマホ症候群だけでなく普段の自分の姿勢の猫背や歪みなど、あらゆるチェックにも適している。アレックスは今年2月、世界最大のモバイル展示会である「モバイルワールドコングレス(Mobile World Congress:MWC)」で公開され、好評を得た。現在は約1万4600円で販売されている。
一方、大阪市に本社を置くグンゼ株式会社は、日本電気株式会社(NEC) との共同開発によって着用するだけで姿勢や消費カロリー、心拍数などの情報を計測できる衣料型ウェアラブルシステムを開発した。こちらは今年1月に開催された「第2回ウェアラブルEXPO」にて公開されたもの。 グンゼのニット技術で導電性繊維をインナーに加工し、センサーをめぐらせることでデータを計測する。センサーや配線部分も伸縮するため、 通気性も良く、実際に肌着として日常的に着用できることから注目を浴びた。一部部品を取り外すと、洗濯も可能だとか。
データはユーザーのスマートフォンに自動送信され、確認できる。さ に、NECのクラウドを経由してスポーツジムなどのトレーナーとも共有でき、フィットネスプログラムに活用することもできる。 販売にはまだ至っていないが、グンゼ社の子会社が所有するスポーツクラブにて年内の提供を目標にしている。
スマホ症候群の予防としては、長時間の使用を控えることと、できるだけ高い位置でスマホを見ることが効果的だとされている。一方、姿勢を意識することで、自身の健康管理もでき、現代病をも予防するこのように画期的なサービスは、今後ますます注目を集めそうだ。