高齢者の孤独感を解決!?…続々登場「ペットロボット」への期待

ロボティア編集部2016年10月13日(木曜日)

 世界各国でペットロボットの発売が相次ぐ。アメリカの玩具メーカー・ハズブロ(Hasbro)社は、ジョイ・フォー・オール(Joy for All)というブランドの、新たな子犬型ロボットの販売を開始した。同ブランドのネコ型ロボットはすでに販売されている。いずれも人と交流し、人を癒すのが目的。

 豪・ハンザ(Hansa)社も人と交流するペットロボットシリーズを販売している。そして、日本の産業技術総合研究所が世に送り出したアザラシ型ロボット「パロ」。日本だけでなく、米国の多くの病院や高齢者介護施設で、対話するセラピー用ロボットとして活躍中だ。

 ペットロボットには一部、健康効果が認められている。例えば、血圧やコレステロール値の低下、孤独感の軽減、運動や社会への参加機会が増えるといったものだ。一方、本物の犬や猫と比べた時、その効果はどうなのだろうか。いくつかの研究によると、高齢者や子どもに対する健康効果の可能性はあるものの、今後さらに検討が必要という結果になりつつある。以下では、ペットロボットが人間にもたらした良い影響について、考察してみたい。

 オークランド大学(ニュージーランド)の研究チームが、「亜急性期および長期介護新聞(Journal of Post-Acute and Long-Term Care Medicine)」に発表した、2013年の研究によると、パロのような交流型ロボットは、本物のペットと同じ効果を高齢者に与えることができるという。

 この研究では、オークランドの高齢者施設の入居者40人を2つのグループに分け、一方のグループには週2回パロと触れ合う機会をもってもらい、もう一方のグループにはオークランド市内の小旅行や、芸術・工芸やビンゴゲームなどの活動に参加してもらった。両グループとも介入期間は3カ月とし、介入の前後に孤独感、抑うつ、QOLを評価する検査を行った。

 その結果、パロと触れ合ったグループは孤独感のスコアが低下したが、活動に参加したグループでは上昇した。入居者同士の会話もパログループで多かった。また、高齢者施設ではコーディネーターが彼女の飼い犬のテリア犬をよく施設に連れてきて入居者と触れ合わせていたが、テリア犬よりパロに声をかけたり触れたりする入居者のほうが多かったという。

この結果について、研究者らは次のように考察している。

「入居者が本物の犬に話しかけたり触れたりできないことはよくある。これは、本物の犬は触れ合う入居者を自ら選んでいるからだ。つまり、犬に選ばれなかった入居者は犬と触れ合えない。他方、犬型ロボットはすべての入居者の膝の上に乗って、話したり触れ合ったりできる」(研究関係者)

 シンガポールでも同じような研究が行われ、長期高齢者介護施設の入居者は本物の犬にもロボットの犬にも高いレベルの愛着を示した。この研究の共著者である、ワシントン大学(シアトル)のウィリアム・バンクス(William Banks)教授によると、介護施設の入居者は、入院しなければいけなくなった時やペットの世話ができなくなった時などに、世話の心配をしなくてもよいペットロボットのほうを好むという結果となったそうだ。

 ロボットと人間が共感し、人間の精神やからだに良い影響をもたらすという研究は、高齢者に関する研究にとどまらず、各方面から報告されている。両者の距離が縮まりつつある現在、その効果の全体像や、スタディケースがさらに明らかになることが望まれている。

photo by hasbro