防衛省が大学に研究費支給、安全保障技術研究推進制度とは

ロボティア編集部2015年9月28日(月曜日)

防衛省が7~8月に公募していた「安全保障技術研究推進制度」の研究費支給先が決定した。防衛省が発行している資料によると、同制度は防衛省が研究テーマを提示し、研究機関側が技術的提案を行う。その後、優れた提案に対して、防衛省側が研究を委託するというサイクルを作ることを目的とする。

得られた研究成果については、防衛省の装備開発に活用される一方、民生分野にも転用される見込みだ。いわゆるデュアルユース技術として活かされる可能性がある。同制度研究費の年間支給額は1件あたり最大3千万円。3年間で最大9千万円が支給される。

「今回の研究費の支給は、軍事研究を忌避する風潮が強かった学界に風穴を開けるもの。一方では、産業界からの要望という面もある。政府にとっては、安全保障政策と経済基盤の底上げという目標を達成するための、ひとつのアクションと言えるでしょう」(政府関係者)

安全保障分野から流れる資金は、科学技術の発展や経済発展と切っても切れない関係にある。インターネット、電子レンジ、最近流行しているドローンまで、軍事技術から転用され、一般の生活に浸透した技術を挙げてゆけば枚挙に暇がない。

海外各国に視線を向ければ、軍事分野が経済を支える技術開発の後ろ盾になっている例は珍しくない。米国防省傘下のDARPAが世界各国から優秀な人材を集め、その能力を競わせていることは有名である。インドも今年1月に、自国の国防研究開発機構(DRDO)をDARPA方式に改編すると発表した。ロシア国防省は昨年新しく作られた高等研究財団(FAR)に1億ドルを出資すると明らかにしている。欧州では2001年に「ヨーロッパ版DARPA」を作るという目的から、欧州防衛局(EDA)が設立された。


朝日新聞によれば、安全保障技術研究推進制度には「軍事利用を目的に、大学や国の研究機関に研究費を支給する初の試みで、109件の応募があり、そのうち大学が58件を占めた。採択は9件で、倍率12倍の“狭き門”となった」という。

また朝日新聞は、「超高速の航空機エンジン開発、ロボットや無人車両技術など28分野が対象で、研究成果は『国の防衛』『災害派遣』『国際平和協力活動』への活用を想定されている」と説明。加えて、テーマとして「光や電波などを吸収し、兵士や兵器を敵から見えにくくする『メタマテリアル』、木ぎれなど戦場で入手できるありふれたもので発電できる『超小型バイオマスガス化発電システム』」など最先端技術の開発が課題として提示されていると報じた。

防衛省は同省技術研究本部のHPで「近年、民生・学術分野における科学技術の著しい発展を背景に、(中略)防衛技術と民生技術のボーダレス化が進行している」とし、「防衛にも応用可能な民生技術を積極的に活用することが重要であると考えている」と政策実施の背景を明かしている。一方で、今回の安全保障技術研究推進制度のような研究費支援が進むことにより、大学による軍事研究が拡大するのではないかという懸念も浮上しはじめている。