「筋トレはじめました」…フライト3700時間のドローンオペレーターが語る【業界のリアル】

ロボティア編集部
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「極端な例で言うと、1日合計5時間ほどのフライトを行うこともあります。しかもGPSの入らない制御の難しい環境です。それが、1週間連続で続くケースもあります。それでも、一回々々のフライトでは、集中力を同じだけ発揮しなければなりません。仮に意識が朦朧として機体を墜落させてしまえば、クライアント様への迷惑だけでなく、人やモノに被害がおよぶ。体力勝負と言ったのは、そういう経緯です」

 オペレーターの体力以外に、「測量」や「インフラ点検」の現場にはどのような難しさがあるのか。十田氏は「ふたつは似て異なる」と前置きしながら、具体的に説明してくれた。

 まず測量に関しては「現行のテクノロジーで自動化がほぼ達成できている」という。測量を実施する側がしっかりと飛行計画を立て、定められたルートをドローンに順守=自律飛行させさえすれば、コストダウンなど成果を得ることができる段階にまで実用化が進んでいるそうだ。「それでも、課題はある」と十田氏。例えば、植生が鬱蒼としたエリアなどでは、写真測量のでは地表面のデータが取れない。そのため企業からは、木など障害物があっても点群データなどを作成できるレーザー測量の手法を使いたいという需要が増えているという。ただこちらは、設備の値段が高いという事情がある。普及までには、しばらく時間がかかる見通しだそうだ。

 一方、「インフラ点検については、自動化できない部分がまだまだ多い」というのが十田氏の実感だ。

「インフラ点検になると、飛行計画に加えて、安全かつ効果的な成果を得られる運用ノウハウやオペレーション技術が必要になってきます。それらは、オペレーターやドローン運用者など人間の能力に属するもの。例えば、何か構造物のひび割れなどを、ドローンで撮影・点検したいとしましょう。現在のドローンの自動化の水準では、構造物との安全な距離を保ちながら、データ利用しうる解像度が十分な画像を撮影することが、まだ機能的にできません。また非GPS環境もなどでも、ドローンによる自動撮影は困難。そこでは、人間のオペレーターによる操縦技術など運用ノウハウが、成否を分かちます」

 十田氏の言葉を少しだけ補足したい。インフラ点検に用いられるドローンは、主に人間の目を代替する役割を求められている。これまでのインフラの点検は、人間の作業員の目視によって行われるケースが大半だった。ただ高所作業などが避けられないため、危険要素が伴ってきた。しかも、ロープワークなど特殊能力を持った職人の数も限られる。それを、ドローンで代替できないかという訳だ。また、ドローンで集めた画像をAIなどで解析すれば、人間よりブレの少ない判断基準を設けられるという期待もある。つまり、これまでは担当作業員によって、「修理する必要があるか否か」が判断されてきたが、その判断を自動化できるかもしれないとされているのだ。

 ただ現在のドローンの自律飛行の機能では、機体が構造物に追突することなく、データとして有用な解像度を誇る写真を撮影することができない。それが、十田氏が「自動化」できないと話す理由だ。そして、人間のオペレーターの細かい手仕事によってのみ、安全かつ有効にデータを収集=インフラ点検できる可能性があるという話になる。

「僕の経験では、目標の解像度を確保するため、ドローンおよびカメラを適切な距離まで近づけなければなりません。衝突や落下を避けつつ撮影をこなすためには、かなりの集中力を要します」

 なお、国交省はドローンを操縦できるようになる経験時間を約10時間と定めているが、十田氏の話を聞く限り、インフラ点検の現場などで活きる能力を身につけるためには、さらに多くの時間と経験が必須のように思えてくる。

「インフラ点検などの現場では、どのドローンの機体を選ぶか、どんなカメラを積載するか、構造物とどれくらい距離を取って撮影するか、画像の解像度をどう担保するか、また風が強い日に撮影を続行するかどうかなど、あらゆる状況判断が求められます。加えてそれら判断を活かせる操縦の腕も必須です。時に現場では関係者の数が20~30人になるケースも。コミュニケーション能力も必要になってきます」

 ここ最近、世界、そして日本でもドローンオペレーター不足が叫ばれているが、十田氏らUBAAとしても、現場で活かせるノウハウ、技術を兼ね備えたオペレーターが圧倒的に足りてないという問題意識を抱えている。