ドローンメーカー世界大手・DJIが2017年9月に発売開始した産業用ドローン「MATRICE 200シリーズ(MATRICE 210-RTK/ 210/ 200)」。そのうち、実際に「MATRICE 210(以下、M210)」を導入したプロオペレーターに、性能・使い勝っての率直な感想を聞いてみた。KELEK代表の十田一秀氏は言う。
「M210の最大の特徴は、各種カメラをさまざまな形で搭載できるようになったこと。従来のドローン製品だと、機体下部に取り付けられたカメラで写真・動画を撮影するしかありませんでした。それがM210では機体上部にもカメラを取付け可能になりました。対象の下に潜って撮影できるようになったので、インフラの検査現場など、さまざまな用途で使えそうです」
これまでも上向きにカメラを取り付け可能な機体はあったが、M210ではセンサーが機体上部に対応している。つまり、これまでは上部にある対象とドローンが衝突しそうになった際、自律的に止まることができないという限界があった。M210ではその点が克服されている。
「M210には、フロント・下部にビジョンセンサー、上部には赤外線センサーがついています。インフラ点検などで産業用ドローン使用する際、えてして機体上部は暗くなりがち。暗い場所はビジョンセンサーが効きませんので、上部に赤外線センサーを搭載していると考えられます。それにより、上部の対象を撮影する際にも、安心して運用できるようになりました」
M210のふたつめの特徴は、「カメラがふたつ搭載できること」だと十田氏は言う。なかでも、サーマルカメラ(熱感知カメラ)を搭載できるようになったことは、実用面でも大きなメリットになると指摘する。
「これまで、DJI社製のサーマルカメラは、『インスパイア1』や、『Matrice 100(M100)』『Matris600』にしか取り付けができませんでした。インスパイア1だと型が少し旧式なので、バッテリーの持ちも悪く、現場で飛ばすのに不安があった。そこでサーマルカメラをインスパイア2クラスの機体に搭載したいと考えていましたが、その要望をM210が解消してくれたと思います」
M210は、インスパイア2とほぼ同性能(デュアルバッテリー、センサーの2重化など)を誇る。またサーマルカメラと一緒に可視光カメラ(一般のカメラ)も積めるので、対象を認識するという性能においては高評価できる。
「現場では雨の日も多いですが、M210の防塵・防水仕様も魅力ですね。現状だと、カメラは防塵・防水にはなっていないという話ですが、機体自体が雨風の中でも安全というのであれば、作業にチャレンジするという選択肢もでてくるかもしれせん。それに、インスパイア2のバッテリーをそのまま使えるのもうれしい。これまでは、バッテリーの形が変わってしまって、過去の資産が活用できないというデメリットがありました。実際に使用した感じだと、プロペラが大きくなって回転数が少なくなったからか、騒音も小さい。既製品の産業用ドローンとしては、かなりレベルが高いという印象です」
M210を現場で活用していく上で、十田氏がひとつのネックになると考えているのは、その価格設定だ。
「機体が1台約130万円(編注:販売代理店や構成により価格は異なる)で、バッテリーを10セット買ったとして合計で170万円ほど。点検や調査でガンガン使っていこうと考えると、もう少しプライスダウンしてくれることが望ましいですね」
価格、性能ともに、プロオペレーターたちにとって使いやすい“愛機”は、いつ本格的に登場するのか。各メーカーの開発・販売動向にも注目したい。
※M210の詳細レビューについてこちら
取材協力:KELEK×F Direction&Text&Photo by Jonggi Ha(Roboteer)
Movie by オフィステイト(officeTATE)VLOG|Twitter|Facebook|Instagram