日本気象協会と京都大学防災研究所が共同で、4月18日から20日にかけ、鹿児島県鹿児島市桜島にて、ドローンを活用した高層気象観測を実施した。
今回の観測は、火山災害の軽減を研究目的とした「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の一環として行われたもの。複合気象センサーを搭載したドローンを活用し、桜島(計3地点)の高層気象観測を行うことで、火山周辺の風の場(地上から上空までの風の吹き方)を把握するとともに、複雑な地形が天気に与える影響の評価や、火山灰の降灰予測に資するデータの取得が行なわれた。
調査内容は、複合気象センサーを搭載したドローンを複数の高度で空中停止させ、高度1000mまでの風向・風速・気温・湿度の鉛直プロファイルを計測すること。また、ドップラーライダー(上空に向けて発射したレーザー光の反射波を捉え、上空の風を測定する装置)で風向・風速の鉛直プロファイルを計測し、ドローンの鉛直プロファイルと比較検討することとされた。
※観測地点 は京都大学防災研究所ハルタ山観測質( A地点)、黒神地区( B地点)、有村区( C地点) の3カ所
調査に使用されたドローンは、ルーチェサーチ製「SPIDER CS-6」。同機機体重量は3.8kg、ペイロードは4kg。サイズは950×950×400mmで、飛行時間は10分~25分と公表されている。風向風速計には、セネコム製「超小型超音波風向風速計SE-702」が使用されており、ドップラーライダーには三菱電機社製「小型光ファイバドップラーライダシステム」が採用されている。
京都大学防災研究所附属火山活動研究センター長の井口正人教授は、「火山灰の拡散問題を解決するには、山の近くの風、風向風速がどうなっているかを知らなければならない。そのためには実地の観測が必要。目指しているところは『明日の火山灰予報』です。」と、今回の調査の意義と未来像について説明している。
今回の観測・調査を通して、ドローンを用いた気象観測によって、より正確な鉛直方向の気象状況取得が可能であることが実証されれば、人の立ち入りが困難な場所での高精度な観測が可能となると期待されている。また観測を通じ、将来的には噴火時の降灰リスクなどに関する精度の高い予測シミュレーションモデルの開発へつなげることができるとも期待されている。日本気象協会と京都大学防災研究所側は、予測シミュレーションモデルの情報を元に、地域住民の避難行動を支援するための情報提供を可能性にしたいと見通しを明かした。