獣害に苦しむ自治体を救え! 伊那市「ドローン×鹿検知コンペ」密着取材

日本社会におけるドローン活用は、安全性という問題をシビアに問われ続けてきた。というのも、ドローンが周知される発端に「首相官邸落下事件」や「善光寺墜落事件」など、ネガティブなニュースが多かったからだ。業界関係者はその負のイメージを払拭するために奔走を続けているが、安全性を考慮しない一部業者が足を引っ張るというような実情が現在も続いている。例えば、つい先日11月4日にも、岐阜県大垣市のイベントで菓子をまいていたドローンが落下。園児ら6人がけがをするという事件が起きている。その事件について、業界関係者からは「落ちるべくして落ちた」との酷評もある。

なお大会当日に、KELEK×Fと同様に棄権を選択したチームは少なくなかった。参加チーム関係者のひとりは言う。

「私たちはドローンスクールも運営していますが、生徒には雨が降ったら絶対に飛ばしては行けないと教えています。やはり、事故の確率は格段に跳ね上がりますからね。コンペを棄権することは、決して後退ではないと考えています」

実はこの「飛ばすか否かの判断」は、ドローンがいかに自動化しても、最後まで人間が担わなければならない部分だと言われている。言い換えれば、天候や電波状況、周辺環境を見極め、ドローン運用の結果を最大化する司令塔としての役割だ。

今回の伊那市のコンペは、先端テクノロジーとしてのドローンおよびシステムが競いあう場であると同時に、安全性というドローン運用面における最重要課題に対し、各チームの考え方や判断が色濃く反映された大会ともなった。

おそらく、今回の大会について「不完全燃焼」だったとの評価があるかもしれない。しかし、現地で取材した身としては、むしろ逆の印象を受けた。ドローンの本格的な実用化やビジネス拡大を念頭において、参加チームが徹底的かつシビアに運用面まで判断を競ったコンペは過去になかったからだ。それが意味するところは、ドローンがただの“夢”や“先端テクノロジー”ではなく、仕事やインフラとして着実に成長し始めているということではないだろうか。

「最後まで棄権した悔しさは残ります。みんなでアイデアを出しあったプランが通用するのか、実戦で試してみたかった。それでも、これでドローンの大会がすべて終わってしまったわけではありません。次のコンペや現場に向けて、挑戦を続けていきたいと思います」(十田氏)

取材協力:KELEK×F Direction&Text&Photo by Jonggi Ha(Roboteer)
Movie by オフィステイト(officeTATE)VLOGTwitterFacebookInstagram

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。