世界的に有名な労働経済学・リチャード・フリーマン(Richard Freeman、米ハーバード大学教授)氏が、韓国で行われた「2017アジア未来フォーラム」の基調講演に登壇。第4次産業革命と社会の未来に言及し、「人工知能ロボットを支配する者が世界を支配する」と話した。言い換えれば、AIロボットをより多く所有する企業・国家に、富と権力が集中するという指摘である。そのためフリーマン教授は、今後、「AIロボットの所有権」をどのように分配するか、具体的なルールを定めなければならないとした。
「一部の人々は、人工知能時代にも人間の仕事が新たに生じるので心配する必要はないという(中略)しかし人工知能ロボットは、自己学習能力を通じてほぼすべての領域で人間を代替するものだ。しかも、ロボットの価格は安くなっていく」(フリードマン教授)
教授は判断の根拠のひとつとして、2015年にAI専門家たちに対して行われたアンケート調査の結果を挙げた。これは「神経情報処理システム学会(NIPS)」と「マシンラーニング国際カンファレンス(ICML)」で論文を発表したAI専門家352人に対して行われたもの。回答者たちは、15〜20年後にはロボットが「トラックの運転」をするようになり、35年後には「ニューヨークタイムズのベストセラー作家になれる」と予想したという。つまり、将来的には製造業の分野だけでなく、知的労働の分野でもロボットが人間を代替することができるという展望である。
「人工知能ロボットが物理的作業だけでなく、認知作業でも人間と競合するケースが増加するだろう。それに応じて生じる悪影響のレベルは、工場の自動化によるそれをはるかに超える」(フリードマン教授)
教授はそのような前提に立ち、ロボットを所有して生産性を高める企業の利益を、労働者および社会が享受できる方法を見つけるべきだと強調する。具体的な方法としては、労使利益共有制、退職年金などを通じた従業員株式保有制などを提案している。またロボットを所有し利益を共有する企業にインセンティブを与えたり、「ロボット税」を課す方法もあると説明した。自動化により雇用を減らした企業から徴税し、政府が労働者の職業訓練や基本所得の財源にあてるというのがアイデアの趣旨である。
Photo by YouTube