世界第2位のスポーツ用品メーカー・アディダス(adidas)は、来年からドイツ国内でロボットを利用して靴の生産を開始することにしたのに続き、2018年には米国、2020年には日本でも生産を開始する計画だ。
アディダスは、本社のある南部バイエルン州にロボットを用いてスニーカーを生産する「スピードファクトリー」を設置。来年からドイツ国内で生産を開始すると5月に発表した。
アディダスは、運動アプリを利用した健康管理サービスなど、デジタル技術を活用した新規事業も拡大中で、スポーツ用品で業界1位を行くナイキとその座を争う構えだ。
アディダスのヘルベルト・ハイナー社長は日経アジアンリビューの取材に応え、過去30年間、靴の生産拠点を韓国、中国、ベトナムなどアジアの人件費が安い国に置いてきたと前置きした上で「しかし現在は、ロボットの導入で人件費が高いドイツでも、少人数で、24時間体制の生産が可能になった。アジア地域で生産するメリットが薄くなった」と強調した。
アディダスは現在、週1にひとつほどのペースで、スニーカーの新製品をリリースしている。スニーカーは、元の用途と色、サイズが多様で、在庫がたまりがち。消費地で生産し販売する体制を整えれば、納期を短縮し需要にすぐに応えることができ、不要な在庫を減らすことができる=少量生産が可能。かつ、ファッション的な変化にも柔軟に対応できる。
ハイナー社長は現在、年間3億足のアディダスの生産規模について「今後年間15%程度の需要の増加を予想している(中略)アジア地域の生産能力を維持しながら、増加分の4500万足をロボット生産で充当する計画」と説明している。
「日本は私たちの会社の4番目に大きな市場だ(中略)2020年までに(日本で)生産する」(ハイナー氏)
アディダスは、3Dプリンターによる個別仕様のスニーカー生産も念頭に置いている。ハイナー社長は「3Dプリンターでスニーカーの靴底の一部を生産しているが、現在の状態では、コストが多くかかる」とし、ロボット工場の「次のステップは、3Dプリンタ」と強調している。
なお誰もが靴を生産できるようになれば、アディダスが運営する大規模工場の存在が薄くなるのではないかという質問に対しては「アディダスは、個人に運動靴の生産の権利とソフトを販売することができるだろう」と返答している。
アディダスは3Dプリンターの活用にとどまらず、デジタル技術を前面に押し出した事業拡大も計画している。昨年買収したオーストリアのスマートフォン用運動記録アプリ開発企業ランタスティック(Runtastic)が代表例だ。同アプリを利用すれば、過去の運動履歴や消費カロリーを調べたり、友人同士ジョギング結果を競うこともできる。世界で1800万人にのぼるアプリ利用者を、アディダス製品の顧客に引き入れる計画だ。
ハイナー社長は、このような健康管理サービスが消費者との接点を増やし、「スポーツ愛好家が私たちの製品を購入することになるだろう」と相乗効果に期待を示した。アディダスの将来のビジネスモデルは、携帯電話機を販売してアプリでも収益を上げる米アップルに近い形で進化していくというのがハイナー・社長の説明だ。