AI時代突入でも意思決定は「人間」…第4次産業革命で経営者に必要とされる能力とは

ロボティア編集部2017年7月19日(水曜日)

「第4次産業革命の時代に突入しても、人工知能(以下、AI)が最高経営責任者(CEO)を代替することはないでしょう」

 最近、韓国を訪問した米UCLAアンダーソン経営大学院のジュディ・オリアン(Judy Olian)院長は、韓国メディアの取材に対して、そう言い切った。加えて「第4次産業革命の時代には、AIおよびロボットが多くの変化をもたらすが、決して人より高い価値を発揮することはできないだろう」と予測を示した。

 アンダーソン経営大学院は、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー校)とともに、米国西部の代表的な経営大学院として認知されている。そのアンダーソン経営大学院で代表を務めるオリアン院長は、AIはデータを処理・生産する役割において人を上回るかもしれないが、最終的にデータから企画を生み出したり、意思決定を行うのは人間の役割であり、価値と目標設定、インスピレーションの共有、意思疎通などの主体は機械ではないと強調した。

 オリアン院長が指摘するような4次産業革命時代の特徴は、すでにUCLAの経営教育方針にも徹底的に反映されていると言われている。同大学院が強化するのは、「データ分析」と「異なる文化への理解」だ。

 まず、データ分析教育および研究を強化するため、最近、大学院内には「ビジネスデータ分析科学」の修士課程が開設されたという。オリアン院長は、多様なデータを分析する能力を向上させ、さまざまな状況に適用できる能力を育てるのがプログラムの目的とした上で、同学科が経営学、経済学、統計学、数学など多分野の専攻教員で構成された“融合学問”になりうる可能性を持ち、学界や企業から注目されていると説明している。併せて、膨大なデータの洪水に飲み込まれ、「データの奴隷(data slave)」になることを防ぐ教育・研究が、今後、本格的に行われていくだろうと見通しを語っている。

 オリアン院長は、経営学を専攻する人々に「人間や異文化への理解を広げる勉強や経験をたくさんすべき」と語りかける。加えて、「専門性にとらわれない横断的な視点や、地球規模の問題にも関心を持つ方がよい」とアドバイスを送っている。

 実際、オリアン院長は、自分が担当する講義でも、他人とチームを構成して進めるプロジェクトに意義を持たそうとしており、同大学院レベルでは多くの海外訪問プログラムが開発されている。特に高い関心を注ぐのが、アジアおよび中南米地域だそうだ。

 AIが発展する中、磨くべき能力とは何か。経営学分野における著名人のひとりが、「データ」と「人間とその文化」に着目せよと指摘したことは、特筆すべき事柄かもしれない。

Photo by Twitter (Judy Olian)