新生児向け「液体ウェアラブルデバイス」開発計画…英サセックス大

大澤法子2018年1月29日(月曜日)

身体への密着性を考慮し、より柔軟性に富んだウェアラブルデバイスへの需要が高まっている。そんななか英サセックス大学の研究グループは、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団からの「資源が乏しい状況下でも製造可能なウェアラブルデバイス」の実用化の要請に呼応し、液体ベースのウェアラブルデバイスの研究開発プロジェクトを続行中だ。

注目のウェアラブルデバイスは新生児向け遠隔診療プラットフォームとしての活用を想定したものとなっており、使用感はまるでフィットネストラッカーだ。通常、寝間着に装着した状態で使用する。

高感度センサーを内蔵しており、センサーが呼吸や心拍数のデータを計測すると、スマートフォンへ送信、その都度自動更新が行われる。こうして、ワイヤレスかつ非侵襲的な診療体制が確立される。睡眠時無呼吸症候群や不整脈など、生命に関わる症状の早期発見を助けるアイテムとして期待が持たれる。

デバイス内は電気を通すグラフェン分散液や水、油、つまり液体で満たされており、サラダドレッシングを作る時と同じ原理がこの製品開発に活かされているという。まず、水と油の入った容器を振り、浮遊物を数滴別の容器にとる。浮遊物は凝集し、一方で液体が時間をかけて分離する。具体例を出すとラバライトのようなイメージである。ここでグラフェンの出番だ。液滴の表面上に付着したグラフェンは、液滴の凝集を阻止する作用を発揮する。

グラフェン粒子が液滴の周辺で形成されると、粒子から粒子へと跳びはねるように電子が進んでいく(=伝導性)。センサーを延ばすと、液滴が圧搾・変形。一方でグラフェン粒子が互いに離れ、電子の移動が阻まれる。グラフェンとは炭素原子の結合により組成された二次元物質を指す。柔軟性や伝導性、強度の面で優れており、近年多くの研究分野で使用価値が見出されている。グラフェン自体は天然由来成分「グラファイト」で作られており、製造コストを抑えることが可能である。

「我々はグラフェンベースのウェアラブルセンサーをより安価に生み出すことができる。新生児に不快感を与えることなく呼吸や心拍数を直感的に診断可能なデバイスを目指している。早ければ2~4年後、あらゆる生体データをワイヤレスに読み上げるスーツとして実用化されるであろう」(アラン・ダルトン教授)

本研究内容は2018年1月9日、英国王立化学会誌『Nanoscale』に掲載された。

参照サイト

Photo by sussex.ac

大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

https://roboteer-tokyo.com/about