AIで「仮想薬効」を予測するプラットフォーム登場...迅速かつ低コストの抗がん剤開発が可能

ロボティア編集部2018年6月26日(火曜日)

韓国のSyntekabio社が開発した「AI薬効予測プラットフォーム」を活用すれば、新薬の候補となる物質の「仮想薬効」の予測することができ、またすでにある治療剤のなかから抗癌効果がある物質を発見することができるという研究結果が発表された。

6月26日、Syntekabio社は自社で開発を進める「CDRscan」(cancer drug response scanning)が、ネイチャーの姉妹誌であるサイエンティフィック・レポート6月号に掲載されたと発表した。

CDRscanは、肺がん、肝臓がんなど、さまざまながんに由来する約1000種類のがん細胞腫を対象に、「仮想薬効予測」を行うディープラーニングモデル。候補となる物質の化学構造情報さえあれば、いくつかの珍しいがんを除いた大部分のがんに対して、「抗がん効果がどうか」「どのようながんに効果的か」を予測することができる。

CDRscanは、これまでAI企業が主に使用してきた薬物の化学的特性データに加えて、遺伝子のビッグデータを利用して薬効を予測する。がん患者ごとに異なる遺伝的特性を、新薬開発プロセス内に考慮することで、パーソナライズされた精密医療を実現することが目標だ。

同プラットフォームを研究する関係者は、蓄積されたビッグデータとAI技術を融合することで、より広範な「薬として活用できそうな物質」にスクリーニングをかけることが可能であり、抗がん物質の発掘にかかる時間とコストを大幅に下げることができると説明している。また、CDRscanを活用すれば、他の疾患の治療薬のなかから抗がん作用がある薬の発掘も可能となり、“薬の用途変更”を行うことで、迅速かつ効果的な抗がん剤を実現できるとしている。

Syntekabioは、韓国電子通信研究院(ETRI)の研究企業で、遺伝子ビッグデータプラットフォーム(PMAP)と、ディープラーニング新薬開発プラットフォームのふたつの技術を保有している。最近では、スマイルゲートインベストメント、KDB産業銀行、韓国債券投資顧問、Altos Ventures、Yozma Groupから120億ウォン(約12億円)のシリーズB投資誘致に成功している。