ナブテスコやハーモニック・ドライブ・システムズが、世界シェア95%を占めるとされているロボット用精密減速機。それを「国産化していく」と宣言する韓国企業がある。モーター・減速機の製造メーカー・SPGだ。
同社のヨ・ウンギル代表は16日、韓国現地メディアの取材に答え、「日本のメーカーがこの記事を読み、私たちの技術をどこまで来たか知るべき」と話す。SPGでは過去4年間の営業利益の30%を研究開発に注ぎ込み、日本企業の独占を終わらせる国産ロボット用減速機の開発に成功。日本製品の70%の価格で、同性能の部品を作ることができると自信をみせる。9月初めからロボット用減速機の量産入り、来月からは韓国・中国のロボットメーカーと製品の実験に入る予定だとしている。
ロボット用減速機とは、ギアを利用してモーターの回転速度を下げる代わりに駆動力を高める部品で、ロボットの動きを制御する関節の役割を果たす。そのサイズは小さいが、値段はロボット全体価格の3分の1ほどを占める場合もあるほど、核心的な部品のひとつである。
SPGの親会社の立場にある成信は、1990年に日本のモーター会社に見学に行き、減速機の製造ラインの前で“屈辱”を受けたという。日本の関係者から「韓国の技術では作ることができない」と指摘されたのだ。モーターとは異なり複雑な技術が要求される減速機は、そのすべてが日本からの輸入に依存していた。当時、ヨ代表は成信の研究員で、その見学の日以降、日本へ派遣されたという。そして2年間にわたり日本に通い、減速機の設計法を学習。また、耐久性強化のための熱処理技術など他の技術をドイツ、スイスなどで学び、その知識をベースにSPG が設立された。
SPGは当時、ジューサーやコピー機用の減速機など比較的開発が容易な製品から始め、 2002年には冷蔵庫用アイスクラッシャーの減速機を発売。徐々に技術力を認められていった。ヨ代表は経営をまかされた後、本格的にロボット用減速機の開発に乗り出した。課題は山積していたが、2015年から約3年間の研究開発の末、精密減速機を作ることに成功した。なお、ヨ代表は製造法が露呈することを避けるため日本企業は関連部品を販売しないほど牽制をみせたが、試行錯誤の末、独力で特殊合金鋼素材の部品を製作することに成功したと開発ストーリーを語っている。
一方で、ヨ代表は韓国の大企業に対する不満も隠さない。国内中小企業の技術力を理解しないというのだ。例えば、中国の家電大手企業からは会長が直接訪ねてきて、その日の夕方には白酒を飲みながら商談を行うが、韓国の大企業は部長クラスでも会うのが難しいという。その背景として、韓国の大企業は市場で実証された日本製の部品を好む傾向があり、国内の技術力には目も向けていないからだとする。
日韓の経済的な摩擦が深刻化する裏側で、韓国中小企業の動きはさらに活発化してくるのだろうか。政治的な先入観なしで事態を観察した時、ロボット市場を取り巻く変化が浮かびあがってくるかもしれない。
Photo by SPG HP