独・マックスプランク研究所(MaxPlanck Institute) のMetin Sitti教授率いる研究チームが、体内で薬物を運び乳がん細胞に投与する超小型ロボット「マイクロローラーズ」を開発した。
研究チームは血管の壁に沿って血流と反対方向に動く白血球からインスピレーションを得てマイクロローラーズを設計した。 同ロボットはガラス微粒子からなる球形。ニッケルと金から成る薄い磁気ナノフィルムと、がん細胞を認識する分子、抗がん剤の役割を果たすドキソルビシンで構成されている。
マイクロローラーズは磁場を通じて血液の流れと反対方向に動くように操縦可能だ。毎秒最大600マイクロメートルまで速度を出すことができる。研究チームは血管系の分岐点に達した時、正しいルートでない場合は戻ることができると説明している。
研究チームは、マウスの血液と人の内皮細胞で満たされた合成管を利用したシミュレーションで同ロボットをテストした。テストに使ったロボットは直径が3マイクロメートルから7.8マイクロメートルまで様々だった。これは、人間の赤血球の直径が最大8マイクロメートルであることを考慮したものだ。ロボットは癌にかかった組職と健康な組職で構成された混合物に触れると癌細胞にだけ付着した。またUV光線で活性化すると、ドキソルビシンを放出した。
研究チームは、薬物の放出を誘発するにあたって、熱や近赤外線などの方法を使うことも検討している。今後、体内で分解される生分解性素材でマイクロローラズを製作していく計画だという。加えて、動物を対象にロボットをテストする予定である。
Sitti教授は、本来、薬物を大量に必要とする場合でも、ロボットが正しく目標物まで薬物を運ぶことになれば量が少なくて済むと説明している。
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