【シリーズ日の丸ロボットは今】日本で見かけるサービスロボットはなぜ外資系ばかりなのか?

ロボティア編集部2022年9月12日(月曜日)

この3年で日本国内のサービスロボット市場は爆発的に成長した。コロナ感染症の影響で人の行動が制限され、人と人との非接触が市場価値を持つようになってからは特に飲食店を中心に、配膳ロボットが急速に普及した。記者は日本のロボティクス推進を専門に取材を重ねて来たが、実はずっと引っかかっていた問題があった。それは日本製のロボットの存在感についての問題である。

実際に生活していてみかけるのは、ほとんど外資系のロボットだ。猫型のフォルムが話題のBellabotは中国系、Keenon社のPeanutも中国系、イオンモール常滑でコーヒー配送をしているCartken社はGoogle出身エンジニアが立ち上げた米国系、高シェアを誇るソフトバンクServiも実は米国のBearRobotics社が開発したロボットである。産業用ロボットの分野でファナック、安川、エプソンなどの世界的なメーカーを有し、一時は「ロボット大国」と言われた日本からは、なぜサービスロボットが出ないのだろうか。

実は日本製のサービスロボットがないわけではない。パナソニックを始めとして、日立製作所、三菱電機、そしてベンチャー企業のZMPなどサービスロボット商品の開発は進めている。しかし日常生活をしていて遭遇するのは、圧倒的に外資系企業だ。なぜこういう事になってしまうのだろうか。一つには日本ではサービスロボットの開発は主に大手電気メーカーが担当しているという背景があるだろう。

米国でも、中国でも、産業用ロボット事業に参入するのはIT系ベンチャー企業が中心であり、大手電気メーカーによる参入は少ない。ベンチャー企業の特性として事業推進のスピードが早く、水平分業が得意である。またGoogleや阿里巴巴、百度などのIT系メガベンチャーはこれらのロボットベンチャーに重点的に投資をし、さまざまなサポートを提供する。これらのベンチャー企業は、トライ&エラーに大きな抵抗がなく、走りながら考え、失敗したら修正を加える、というスタイルで事業を開発していく。

一方日系の大手電気メーカーは日本の厳しい安全基準や、業界標準、ISOに則った生産を重視し、他の事業部や販売代理店とのしがらみもあって、どうしても慎重な開発を余儀なくされる。このような事情もあって、サービスロボット黎明期である現在、どうしても外資系のロボットメーカーに有利な状況が生まれてしまっている。

ところがここに来て、日系ロボットメーカーの「逆襲」が始まりつつある。安全基準や、日本のユーザー向けの使いやすさにこだわりぬいた商品がオムロン、パナソニック、三菱電機等のメーカーによって開発され、実際の生活現場に投入され始めたのだ。日の丸ロボットメーカーは、これを機に市場プレゼンスを獲得することができるだろうか。このシリーズでは、日系ロボットメーカーが開発したサービスロボットに焦点をあて、今後の可能性について考察していきたい。

シリーズ第一回ではオムロン社が開発した複合型サービスロボットToritossの開発ストーリーを紹介したい。