米政府が世界初認可、ヤマハ発動機の無人機(ドローン)開発秘話

ヤマハ発動機の農薬散布ドローン
photo by youtube(ヤマハ発動機公式チャンネル)

坂本氏がまず指摘したのは、飛行能力以外での技術力についてだった。

「農薬散布に限って言えば、機体の飛行性能以外にも、農薬散布のためのアプリケーションや機器の開発が進まなければいけません。重要度の割合で言うと、6対4でしょうか。それほど、農薬散布は難しい」

 前述したが、農薬散布用無人機には防除効果や残留農薬の問題をクリアすることが求められる。撒き方にムラがあってもいけないし、撒き過ぎもまた問題となる。また、ただ撒けばよいという訳ではなく、しっかりと吹き付ける作業が必要になってくる。

 ヤマハ発動機の無人機は、農作物の頭上3メートルから5メートルを飛行しつつ、メインローターから噴き出る風を使って吹き付けを行うそうだが、その部分を技術的に解消するのに多大な労力を要したそうだ。

「これは、農家にとっては非常に大きな問題なんです。お米は、地域の米を集めて、農協さんがライスセンターに納品し、残留農薬検査をするというプロセスを経ます。もしそこで一引っ掛かれば、何十トン、何百トンという米を廃棄しなければならない。そうなった場合、一体誰の責任なんだということになる。それを防ぐためにも、現場の声に耳を傾けながら技術を高めなければならないのです」

 続けて、坂本氏はふたつ目の課題を指摘した。それは、無人機を使ったビジネス全体を動かす仕組みを考えなければならないということだ。

「技術革新が起きたとして、それを趣味の領域で使う分には何ら問題はありません。ただし、産業やビジネスとして成立させるためには、すべてパッケージで考える必要がある」

 坂本氏がパッケージと表現したものは、社会的なインフラストラクチャーと言い換えることができる。ドローンについて言えば、性能認定や登録、点検・整備の仕組み、教習の制度、保険の問題などをセットで考えて行かなければならいという指摘である。

「また、その分野を職業とする人材を育てることも不可欠。農薬散布を例に挙げるならば、無人機を使用した防除を専門にやる人を職業として成り立たせてあげなければならない。他にも、整備する人、教習する人も、片手間にやらすわけにはいきません。技術習熟度が高い人的資源がなければ産業として成長が難しいし、リスクヘッジにも懸念が残る。これは、ビジネスモデルとしての課題でもあり我々も苦労しているところです」

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。