米政府が世界初認可、ヤマハ発動機の無人機(ドローン)開発秘話

ヤマハの農業
photo by youtube(ヤマハ発動機公式チャンネル)

 ちなみに、ヤマハがFAAに認可を受ける際に決めてとなったのは、このパッケージだったという。

「FAAには、日本でひとつずつ精査していった点検整備マニュアルや、整備士を指導する要領などを英訳して提出している。教習ひとつとっても、まったく無人機を触ったことのない人が短時間で散布できるようになるために、技量なり知識を与える方法を模索しなければならない。そこが難しい点なんです。つまり、機体だけではなく、それを使う人材をどう教育、指導するかまで提示して、晴れて認可となった。ある意味、有人機の簡易版ですね。やはり、システム全体として提示しなければ認可は難しかったでしょう」

 最後に、坂本氏にも今後の法整備の問題について意見を聞いてみた。

「いまちょうど規制の話が出ています。ドローンを実用化したい側は何でもできるって言いますし、リスクを懸念する側はとにかくダメという論調。噛み合っていない印象です。個人的には、社会が許容できる範囲を示すのが規制だと思うんですよ。車の制限速度で考えてみてください。本当に人にリスクがないスピードだと5~10㎞が精一杯。でも、それじゃあ、物流に支障をきたしますし、社会が成り立たない。そのために社会が許容できる線引きをするのが規制なんです。実際、ドローンについてはかなり厳しい規制でスタートすると個人的に想像しています。ただ、何もないよりいいこと。そこから、変えていけばいい。無人地帯しかだめなら、そこで実績を作って徐々に枠組みを変えていく。そういう作業を地道に続けなければ、産業としての発展はありえないと思う。一足飛びに、どこかのイベント会場で飛ばしたいという話になっちゃうと、世の中や技術も全くついてこない。まずはできることからはじめる。ヤマハ発動機も、関係省庁や日本産業用無人航空機協会など関係団と連携しながら、一歩ずつ歩を進めていこうと考えています」

 技術の発展は問題意識を生み、問題意識は規制を生む。そしてさらなる技術の発展が規制を変え、人々の生活を豊かにする。ドローンはいま、ちょうどその入り口にいる。

「できることからはじめる」

 無人飛行の分野で30年以上も技術とノウハウを蓄積してきたヤマハ発電機、そして坂本氏の言葉は重く、そして正しい。千里の道も一歩から。つまるところ、今も昔も世の中を変える方法にショートカットはないのかもしれない。

(取材・文 河 鐘基 、ロボティア編集部)

※同原稿は、扶桑社新書「ドローンの衝撃」に収録されたものを再構成したものです。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。