【シリーズ日の丸ロボットは今】①オムロン複合型サービスロボットToritoss開発ストーリー(前編)

ロボティア編集部2022年11月28日(月曜日)

[↑写真]品川のオムロン ソーシアルソリューションズ展示場でデモ走行をするToritoss

Toritossの登場

2022年6月、イオンモール京都桂川店をそのロボットは颯爽と走っていた。前方に大きなサイネージ画面をもち、高さ892mm×幅590×奥行790。遠くから見ると笑いながら走っているようにみえなくもない白い躯体のそのロボットは、名前をToritoss(トリトス)という。オムロン ソーシアルソリューションズが開発・展開する複合型サービスロボットだ。

Toritossは搭載したサイネージで来客者の案内をする事ができる。同時に広告配信や情報告知を行うプロモーション支援ロボットでもある。それだけではない。Toritossはその足回りに強力な清掃機構を持ち、人の代わりに掃除を行う事もできる。さらには固定カメラと双方向通話機能を備え、本格的な巡回警備に使う事もできる。レストランやスーパーなどでモビリティロボットを見かける事が増えて来たとはいえ「広告案内・掃除清掃・巡回警備」の3つの機能を同時に兼ね備えたロボットは極めて珍しいといえる。

案内・清掃・警備という3つのアプリケーションをあわせ持つ複合型ロボットがどのように誕生したのか。オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社の事業開発統括本部の猪尾和大氏に話を聞いた。

複合ロボットの開発

弊誌:猪尾さん(以下敬称略)のバックグラウンドを教えて下さい。

猪尾:私は大学・大学院時代はロボット工学を専攻し、自律移動ロボットについて研究していました。教職もとっていて、教師になる道もあったのですが「実際にロボットを動かしてみたい」という気持ちで就職先を探し、最終的にオムロンを選びました。オムロンには「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」という理念があり、そのために一人ひとりのWILLを大事にする文化があります。やりたい事をやらせてくれそうだなと思い、オムロン入社を決めました。

弊誌:やりたい事をやらせてくれる風土というのは大切ですよね。

猪尾:オムロンはむしろ「君は何をやりたいのか?」を問われ続ける風土ですね。ボトムアップでもなく、トップダウンでもなく、我々は「オールアップ」といっているのですが、みんなが一丸となって「やりたい事はなんだ」を追求している感じです。もうひとつ、こちらは私の個人的な夢になりますが、私は世の中にまだ存在しない新しいものを生み出したいという思いがあります。オムロンでは、同じような思いをもった人々が集まっており、一緒に社会課題を解決していける面白さがあります。

弊誌:オムロンというと医療機器と工業自動化のイメージがあるのですが、モビリティロボットは新しい領域への参入という事で、大きな困難が伴ったのではないでしょうか?

猪尾:そうですね。実はオムロングループでは、都市交通インフラの分野で大きなシェアを持っています。皆さんが駅で使う自動券売機や交通管制システムですね。私はオムロンに入社後、ずっとこれらの交通システムの仕事に関わって来ました。そこで外観設計や、お客さんが実際に使う事を想定したインターフェースの設計などに取り組んで来ました。そこで鉄道会社や駅で働く人々と日々接する中で、お客様の課題への理解を深めて来ました。

そんなある日、面白い出会いがあったのです。オムロンでは管理職と若手が意見交流する為のランチ会が制度としてあるのですが、そこで新規事業を担当する部長と意気投合しました。実は私の趣味はラジコンなのですが、部長の趣味もラジコンで、二人で盛り上がりました。2週間後、その部長から電話がかかって来ました。部長が開口一番「猪尾君、実は大きなラジコンが手に入ったんだけど、一緒に見に行かないか?」というので、私も「ぜひ、見に行きましょう」と返しました。

その「ラジコン」が、後のToritossの開発につながってくるのです。

⇒オムロン複合型サービスロボットToritoss開発ストーリー(中編)に続く。