(写真:COCOAの通知画面)
政府は成果をアピールするも……
こうした批判が多かったことを受けてか、政府は2023年2月と3月にCOCOAの総括報告書を発行しています。この総括報告書において政府はCOCAについて、
・コロナに対する国民の不安払しょくの一助となった
・通知を受けた利用者の4分の3が普段の行動を変えようと考えた
・諸外国の類似アプリに比べ非常に短期間で且つ安価で開発に成功した
などといった成果をアピールしています。結論から言えば、自画自賛もいいところでしょう。
まずCOCOAの成果として最もアピールしている2番目の「通知を受けた利用者の4分の3が普段の行動を変えようと考えた」という点ですが、わざわざアプリをインストールまでしているのだから、通知を受けて行動を改めるというのはごく自然なことでしょう。出なきゃ何のためにアプリを入れたのか、意味がなくなります。
むしろわざわざアプリを利用しながら、通知を受けても行動を変えなかった人が4分の1もいたということの方が私には驚きです。恐らく、行動を変えなかった人はアプリの無用性を感じていたからではないかと推察します。
また個人的に思う点として、感染抑止効果を測るのであれば、アプリ利用者と非利用者の期間中における感染率の比較こそ、最も重要で参考に足る指標になったのではないかと私は思います。こうしたデータを期待して総括報告書にも目を通したのですが、こうした実際の感染経験に関するデータはついぞ見当たりませんでした。
安さアピールに本音が見え隠れ
次に3番目の「諸外国の類似アプリに比べ非常に安価で開発に成功した」点に関しては、わざわざ他国の類似アプリの開発費を引用するため増補するなど、政府も大きな成果として強くアピールしています。
具体的には、英国が12週間をかけて約40億円、ドイツが50日間をかけ32億円の開発費が発生したのに対し、日本は43日間かけて1億円で開発に成功したとアピールしています。
なお日本の開発費に関して、過去の報道では開発費用の発注金額は4億円とされていながら、総括報告書の開発費国際比較ではなぜか1億円とされています。な開発費金額が4分の1になったのかという理由や金額出所に関しては、報告書から読み取ることができませんでした。
話を戻すと、前述の通り総括報告書では短期間且つ安価でアプリの開発に成功したことをアピールしていますが、これはまともなアプリが作られたことを前提にしなければ本来アピールできない内容でしょう。
前述の通り、見切り発車的にリリースされたCOCOAはリリース当初からトラブルが頻発し、挙句の果てには重大トラブルが4ヶ月にもわたり放置され、その評価を大きく落としました。であればこそ、もっとしっかり費用と時間をかけ、様々な場面の使用に耐え得るしっかりとしたアプリを開発しておけば、本当の意味での感染対策効果が得られたかもしれません。
こうした観点を踏まえるなら、開発期間と金額の低さをアピールするということは、COCOAの問題点についてそもそも直視していないという印象を覚えるほか、政府のCOCOAに対する本音が透けて見えるような気がします。
【官製アプリ開発の実態】「新型コロナ接触確認アプリCOCOAはなぜパッとしなかったのか?③本当の原因」に続く。