伝説となった国産スマホ「REGZA Phone」は何が問題だったのか?(前編)

花園 祐2024年3月26日(火曜日)

2008年7月11日、アップル社製スマートフォンである初代「iPhone」がこの日、ついに日本でも発売されました。それまでの日本国内の携帯電話市場は、日系メーカーらによる「iモード」や「ワンセグ」といった独自機能を備えたフィーチャーフォン、いわゆる「ガラケー」が市場の大半を占めてきました。スマートフォンの元祖であり、世界的にも大人気となった「ブラックベリー」でさえも日本市場ではほとんど普及せず、ガラケーは世界の潮流から外れて独自発展をしながら国外メーカー製携帯電話をはねのけ続けていました。

しかしこのiPhoneに関しては、文字通り黒船ともいうべきビッグウェーブを日本の携帯電話市場にもたらすこととなります。元々、携帯音楽プレイヤーの「iPod」で若者を中心に高いブランド認知度を得ていたうえ、それまでのガラケーにない多彩な機能を提供するiPhoneに日本人ユーザーも瞬く間に魅了されます。2年後の2010年にはサムスンからandroidスマートフォンの「Galaxy」シリーズが日本でも発売され、日本の携帯電話市場もガラケーからスマートフォンへ一気に主役が移っていきました。

この歴史的な時代の転換に直面し、それまでガラケーしか作ってこなかった日系メーカーもここにきて、スマートフォンの開発に着手するようになります。そのような日本スマホ黎明期において、富士通と東芝の携帯電話部門が合併して設立された富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社(現「FCNT」)より、「REGZA Phone(レグザフォン)」と呼ばれるスマートフォンシリーズが発売されました。このスマートフォンは市場において大きな話題を巻き起こし、以後も伝説とともに語り継がれていくこととなります。
伝説とはいっても、悪い方での伝説でしたが……。

東芝のテレビブランドを引っ提げて登場も……

レグザフォンという名称の源流は2008年に東芝が発売した、「REGZAケータイ」という愛称のつけられた「SoftBank 921T」という機種に始まります。
各メーカーは当時、発売する携帯電話に自社のテレビブランドを冠することが多く、他のメーカーからも「VIERAケータイ」、「AQUOS PHONE」などといった携帯電話シリーズが出され、好調な売れ行きを残しました。こうし流れから、東芝グループのテレビブランドであった「REGZA」も自社製携帯電話に、そして富士通との統合後のスマホ製品にも使われることとなったわけです。

そんなREGZAの名を関するスマホとして、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社より2010年10月18日に満を持して発売されたのが、「REGZA Phone IS04(同型機種に「T-01C」があり)」でした。スマートフォンは使ってみたいけどiPhoneなどの外資系ではなく国産メーカー品を探していたユーザーにとって待望の、しかも旧電電ファミリーがタッグを組んで作ったスマホだっただけに高い期待とともに迎えられましたが、発売直後より様々な不具合に対する不評が巻き起こることとなりました。

実際に私も当時、会社の同僚からスマートフォンの機種選定で「富士通製が候補」だと伝えたところ、「富士通はやめろ!」と、かなりマジに止められました。結局その時はスマホの購入を見送ったのですが、あの時同僚が止めてくれなかったらどうなっていたのか。少なくとも、この記事はもっと書きやすくなっていたのではないかという気がします。

発売日に販売停止となった機種も……

では報告されたレグザフォンの不具合には具体的にどんなものがあったのか。あまりにも多すぎるので、以下で箇条書きにしてまとめることにします。

・電源が入らなくなる
・勝手に電源がよく切れる
・起動中によくフリーズする
・アプリを起動するとよくフリーズする
・電話を着信するとフリーズする
・防水を謳ってるが水に濡れると故障する
・処理が追い付かず画面の動きがカクカクもっさり
・突然電波が途切れる
・突然メールを受信しなくなる
・端子不良でよく充電できなくなる
・充電量が100%だったのに一瞬で残量がなくなることがある
・セットしたアラームが鳴らない

以上の不具合は特定の個体に起きたものではなく、幅広いレグザフォンユーザーから「あるある」と言われたほど、レグザフォンでは一般的だった不具合だったようです。

こうした不具合の多さからサポートセンターに連絡したところ、折り返しでかかってきたサポートセンターからの着信でフリーズし、電話を取ることができなかったという体験談も当時見られました。またある人がレグザフォンのユーザーと通話していたら、「ごめん、スマホが熱くなってもう持てないから切るね」といって電話が切られたという、本当なのかよとにわかには信じがたいエピソードも見られました。

どれもこれもスマートフォンとして、いやそれ以前に一般商品としてもどうなのかと言いたくなるような不具合のオンパレードで、どうしてこのような欠陥商品をメーカーが発売したのかが不思議に思えてなりません。しかもこのような不具合にも負けず、その後もレグザフォンの新機種が出るたびに購入してくれるユーザーもいたのですが、後続機種でも不具合は多発し続けました。

特に2011年11月に発売された「T-01D」に至っては、発売当日に通話、データ通信ができなくなるという不具合が見つかり、その日のうちに販売が停止されるという、「なぜ発売した?」と言わざるを得ない代物でした。当時の反応を見ると、「汚名返上ならぬ汚名挽回だな」、「いつものレグザフォン」などという辛辣な言葉のほか、「返品できんのかな……」などと、いち早く手に入れた購入者の嘆き節で溢れていました。

(後編に続く)