【官製アプリ開発の実態】新型コロナ接触確認アプリCOCOAはなぜパッとしなかったのか?③本当の原因

ロボティア編集部2023年12月29日(金曜日)

そもそも真面目に作る気があったのか?

これよりは私の独自見解となりますが、何度もトラブルを頻発し、ユーザー調査で「COCOA を利用して良かったことがなかった」という回答割合が6割にも上ったにもかかわらず、反省点よりも成果を強調する総括報告書を読む限り、政府はそもそもCOCOAに対し、感染抑止効果を初めから期待していなかったのではないかと疑っています。何故このように考えるのかというといくつか理由があり、一つは前項の「他国に比べ早くて安くで作れた」というアピールの仕方が余りにも露骨であったからです。

総括報告書は2月に一回発行された後、上記の開発期間、費用の国際比較データを増補するため、翌月にあたる3月にも再発行されています。ここまでしてアピールするほどの内容というと疑問で、穿った見方をすると、早くて安く作ることこそがそもそもの本位であったからこそ、その目的が達成されたことを強くアピールしているのではないかという風に考えています。

ではなぜ政府はCOCOAを如何に早くて安く作るかにこだわったのか。この問いを考えるうえで私が真っ先に思い浮かべたのは「アベノマスク」です。
誰がどう見ても感染抑止に無意味としか言えなかったアベノマスクですが、何故か政府は多大な税金を行使しながら、マスク不足が解消された時期になってからこのマスクを配布するに至るなど、無駄な入れ込みようを見せました。このアベノマスクを含め流行当初の政府対応を見ていると、感染拡大抑止の効果よりも、政府としてちゃんと仕事しているというアピールを意図した政策が多かったように思えます。実効性はハナから無視し、対策に熱心であることを示すためだけのパフォーマンスに終始していました。

この文脈で考えると、韓国をはじめ他国で感染拡大抑止アプリがその成果を喧伝されるのを見て、「日本も後れを取らず、同じようなアプリを作ったぞ」という仕事している的なアピールこそが、時の政権は求めていたのではないかと思います。なので政府としては、アプリが感染拡大抑止に効果を発揮するか否かなんて初めから眼中になく、それらしいアプリを作って配信しさえすればいいと考えてCOCOAの開発に着手したのではないかとみています。そうした発想だからこそ、「(中身は問わず)早くて安く」作れたことは、政府として誇れる成果となり得たのだと推測します。

足りなかったのは政府の本気度

以上が主に総括報告書の内容から推察した、COCOA開発を巡る政府の腹積もりに対する私の見解です。いくらか強引な推察の仕方だと思う節もある一方、アベノマスクと絡めて考えると、やはり私にはどうしても政府は初めから真面目に感染拡大抑止用アプリを作る気がなかったとしか思えません。

その上でCOCOAに関しては、真面目にやる気がないのなら、リリース後もトラブルが続発してほぼ無用の長物と化していただけに最初から作らなければよかったのではないかと思います。また同時に、どうせ作るのならもっと本気で感染拡大抑止に取り組むべきであり、そのためであればもっと費用と時間をかけてしっかりしたものを作ってほしかったものです。

一応、総括報告書ではアプリ開発を巡る混乱や、こうしたアプリに知見を持つ人材不足などの反省点を挙げ、今後の完成アプリ開発に向けた材料とするとしてはいます。しかし前述の通り、どう考えても不真面目でいい加減な立場でアプリを開発し、いびつな発注構造で失敗したことについてあまり反省を述べていないことから、今後もCOCOAのような国民がほとんど得しない無用な自己満アプリを日本政府は作り続けると予想します。

このCOCOAアプリプロジェクトにはその実効性、発注体制に失敗原因があるのもさることながら、真の失敗原因は開発主体である政府の本気度にあったと私は思います。今後同じ失敗を繰り返さないためにも、総括報告書のような自画自賛こそまずやめ、COCOAの失敗ぶりにもっと目を向ける真摯な態度こそ、日本政府には求められていると思います。