セコム、世界に先駆けるドローン警備サービス誕生の裏側

CCTV Camera technology on screen display
photo by yoursecurityadviser.com

セコムがドローンの採用に積極的な理由がもうひとつある。小松崎所長は次のように付け加えた。

「人間の労力を無駄に浪費させないというのも、ドローン採用の大きな理由です。これは、ロボットやテクノロジー開発全体に言えることで、ドローンに限ったことではないのですが……。産業用ロボットの実用化は、常に人件費削減や経営の効率化の問題として議論されがちですが、人間にとって決してデメリットだけがあるわけではありません」

 この部分については、少し補足して説明することが必要になるだろう。ドローンをはじめとロボットや最新テクノロジーを実用化しようとすると、必ずふたつの問題が持ち上がる。
 ひとつは、安全性の問題。ドローンについて言えば、飛行面での安全性とともに、与えられたタスクをミスなく遂行できるかという、飛行能力以外の性能面で安全性が議論されている。また、犯罪やテロなどに悪用されてしまう可能性から、防犯や安全保障上の安全性もまた問われている。そして、もうひとつの問題が、人間と共生できるか否かという問題である。

 映画「マトリックス」のような世界と言うと極端に過ぎるが、経営効率化のために導入されたロボットが人間の仕事を奪うのではないかという問題意識は、経済的、倫理的な問題として常に提起されてきた。実際、米国FAAが無人小型飛行機に厳しい規制を課す背景には、有人飛行機を飛ばすパイロットたちから、強い反発があるからだという説もある。

 小松崎所長が伝えたかったのは、そういうデメリットばかりがある訳ではないということだろう。逆に、ロボットやテクノロジーを実用化していくことは社会にとってメリットが大きいばかりか、必要不可欠なことになりつつあるという。

 例えば、セコム社はオンラインセキュリティーシステムを日本ではじめて導入した企業であり、その契約数は現在200万件を越えるそうだ。全国規模で見ると、6000万から7000万個のセンサーが警備対象となる建物などに設置されている。異常が発生するとコントロールセンターに情報が集り、最終的に人間が判断して対応するサービスが構築されているという。

 もし、その際、ロボットやテクノロジーの力を全く利用しないとする。すると、ひとつの建物に5人以上の人力を割かなければならず、合計で1000万人以上の人手が必要になるという試算になるそうだ。実に、日本の総人口の約10人に1人が、警備人材として働かなければならないということになる。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。