セコム、世界に先駆けるドローン警備サービス誕生の裏側

セコム飛行船
photo by secom

 すでにドローン技術を実用化の段階まで練り上げてきたセコム社にとっても、今後の法規制の行方は非常に重要だと考えているようだ。最後に小松崎所長に今後の法整備のあり方について意見を聞いてみた。

「研究を開始した5年ほど前、ドローン関連の法規や条例をすべて調べてみました。すると、何もなかった。正直、すごく緊張しましてね。というのも、規制がないということは世間がその存在を想定してないということで、最初の一歩が非常に大事になってくる。今後、ドローンについては法整備が進んで行くと思いますが、そこで基準となるべきは“社会から見た正しさ”だと思います。もちろん、犯罪抑止やリスクヘッジも正しさのひとつですが、技術革新やイノベーションが起きやすい環境を作るというのも正しさのひとつです。それが両立されるような柔軟な法整備が重要になってくるのではないでしょうか」

 警備用ドローンの実用化に成功したセコム社は、“ドローン以後”もすでに見据えている。そのひとつが、警備用無人飛行船の開発だ。想定されている機体サイズは15mほど。ドローン同様に自律飛行を行う仕様だそうだ。また、9個の高感度センサーやカメラが搭載されており、ドローンより広範囲の地域をモニタリングできるという。

 当然、無人飛行船とドローン連携も視野に入れている。例えば、飛行船は地面に近づかず、より広域なエリアを俯瞰・警戒し、何か異常があればドローンに指示を出して対処にあたるとなどがそれだ。小松崎所長は、無人飛行の分野は国際的なスポーツ競技大会など大規模なイベントにも威力を発揮すると考えている。犯罪の抑止以外にも、混雑トラブルや急病人への対処など、空からの視点で解決できることは多い。

「最終的には、児童や高齢者の見守りなど、町内で小型飛行監視ドローンを活用するという未来像を描いています。そうなると、敷地内だけではなくて、市街地などの上空を飛ぶことを想定しなければならない。最終的に、重要になってくるのはコミュニティーのみなさんが、ドローンが自分たちの生活を守るためのロボットだと了解してくれること。これから先、ドローンがなくなるということはないでしょうし、発展しいくはずです。私たちは、みなさんが監視用ドローンに対して了解してくれたときに、すぐに実用化できるよう技術的な用意をしておきたいと考えています」

 ロボットと人間は共生できるか。そしてそれは、どのような形が理想なのか。ドローン産業の発展にとって不可欠なのは、技術やビジネスモデルよりもまず、その哲学的な問いに世論が答えを見つけることなのかもしれない。

 余談だが、セコム社は内需型企業であり日本国内での売上高率は95%を越える。ただ、海外セキュリティー分野でも約72万4000件の契約件数を誇っており、主に経済成長が著しいアジアの国々にノウハウや技術を輸出している。今後、海外への事業展開に期待が持たれている企業でもある。セコム社製のドローンが世界の空を警備する。そんな未来を想像するのは、少し気が早すぎるだろうか。

(取材・文 河 鐘基)

※本原稿は扶桑社新書「ドローンの衝撃」に収録された内容を再構成したものです。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。