2020年、米国では10世帯のうち1世帯が家庭用ロボット(domestic robot)を所有するだろうという予測が出てきた。調査を実施したのは、デジタルマーケットリサーチ会社である、ジュニパーリサーチ社(Juniper Research Limited)だ。なお、今年の時点では、家庭用ロボットを所有している米国の世帯は、25世帯中1世帯という調査結果になった。
同社は特定の家事に特化したスマートロボットが実用化されるだろうと予想。「家事の新しい時代を開くだろう」としている。家庭用ロボットとして代表的なのは、アイロボット社(iRobot)のロボット掃除機「ルンバ」だ。
ただし、人間の姿を模した「ヒューマノイド」については少々、懐疑的な意見を出している。ソフトバンクが販売している「ペッパー」のようなヒューマノイドは、高次元の性能を有するだろうと見られているが、現在の技術では一般に広く普及するのは難しいという見解だ。つまり、消費者の需要に合わせた家庭用ロボットが、今後脚光を浴びる可能性が高いという指摘である。
日本のサービスロボット産業においても今後、“キラーアプリ”の存在が熱望されている。ビジネス的な成功をおさめるためには、ロボットだからできること、ロボットにしかできないこと、ロボットが仕事こなすことで人間のメリットが大きくなることなどを見極め、計画・研究開発およびマーケティングを進めていかなければならないだろう。
日本のロボット産業関係者のひとりは「サービスロボットの時代はまだ始まったばかり」としながら「グローバル市場で勝ち抜くためには、需要や課題を解決するために特化した機能を磨く必要があるだろう」と指摘している。
米ウェブメディア「whatech.com」が「emarketorg.com」の資料をもとに報じた、「家庭用ロボット市場のトレンド」では、今後、家庭用ロボット市場は「家事用ロボット」と「個人サービス用ロボット」に大きく分類されるという予測が出ている。
前者の家事用ロボットとして需要が高いものは、掃除ロボット、芝刈りロボット、セキュリティー用ロボットとなる。後者の個人サービス用ロボットとしては、エンターテイメント&レジャーロボット、教育用ロボット、ハンディキャップアシストロボット、個人の移動および高齢者医療ロボットが注目されるとの予測だ。
「ひとえにロボットを生活に導入すると言っても、その市場が新たな価値を生む場合と、高齢者アシストなど福祉分野に属するケースがある。前者は企業が、後者は国家や自治体が研究・開発を後押し進めていくのが正しい。いずれにせよ、ビジネスとして成立させるためには、ロボットが人間に対してどれだけ新しい価値を生むかをまず検討しなければならないのでは」
何かと話題になることが増えてきた家庭用ロボット、サービスロボット分野だが、その前途が花開くためには、まず企業や起業家と、社会および消費者の対話や価値の共有がまず急務と言えそうである。なお、米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、ロボット産業が2020年頃までに、1530億ドル規模に成長すると予想している。
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