ガートナー「2018年に300万人がロボット上司の指示を仰ぐ」

ロボティア編集部2016年1月20日(水曜日)

 近い将来、会社で作成するビジネス文書を機械が作成したり、人間がロボット上司の指示を受けることが珍しくなくなるとの見解が出ている。

 IT専門グローバルコンサルティング企業ガートナーは、ソウルで開催された「2016年ブリーフィング」で、2018年には、企業の法律文書や市場レポートなど、事業資料の20%を機械が作成するようになると予想した。また、来年にはそれらロボットが多くの企業に導入されることで、コピーライターなどの職業の雇用が冷え込むと指摘している。

 ガートナー責任研究員ジェシカ・エクホルム(Jessica Ekholm)氏は、「経営・管理方式が変わり、データ集約的な業務が生まれることで、それを効率的に行うことができるロボット上司が登場することになる」とし、「さらに客観的な人事考課の評価が行われるなど、私たちの職場環境自体が大きく変化するだろう」と述べている。

 ガートナーは、2018年には300万人を超える労働者が、ロボット上司の指導と監督を受けることになると予想している。加えて2020年には、人が介在しない自律型仲介ソフトウェアを通じた金融取引が、取引全体の5%を占めるとも予測している。

「ブロックチェーン技術の発達で、銀行のような信頼性の高い従来の仲介機関が必要なくなる」(エクホルム氏)

 ブロックチェーン技術とは、世界中に点在するパソコンにデータを置くことで、破壊すことができない分散型ネットワークを構築する技術を指す。また、電子マネー・ビットコインの中核技術であり、取引履歴を第三者機関が一元的に管理するのではなく、個人間(P2P方式)で取引データをやりとりする技術でもある。ハッキングや偽造に対して、高い耐性を持つともいわれている。

労働者_ウェアラブル
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 なおガートナーは2018年までに、生体技術を活用した音声・顔認識が一般化し、既存のパスワードと置き換えられたり、関連特注サービスが拡大すると見込んでいる。一方、企業では200万人の労働者がフィットビット(FitBit)のような健康およびフィットネス関連ウェアラブル機器を義務的に着用することになり、健康記録をもとに保険料の算定などが行われるだろうと予想した。

 一方、2020年までには、半分以上の新規ビジネスプロセスとシステムに、IoTの部分的な要素が適用されるとしている。

 ガートナー副社長兼最高アナリストであるW・ロイ・シュルト(W. Roy Schulte)は「完全な意味でのIoTアプリケーションは現れないが、IoTの部分的な特性を適用した様々なアプリケーションが現れる見通しだ」とし、「それにより、情報中心のタスクを実行するビジネスアナリストや開発者は、システム内で利用できるIoT機能などについて専門知識と方法を熟知しなければならない」と話した。

 またガートナーは、2020年までに50億ドル規模の“闇市”が登場し、偽センサーや動画販売のような犯罪が登場、プライバシー保護が盛んに行われるだろうと展望した。

 ガートナーの副社長兼最高アナリスト、テッド・フリードマン(Ted Friedman)氏は、「IoTは私たちの身の周りのデータを着実に収集することができようになるほど、大きな可能性を秘めている」とし、「統合されたデータは医療診断や環境保護、身元確認の照会に至るまで活用され、個人もしくは企業の意思決定過程に重要な役割を果たすことになるだろう」と指摘している。

IoT_インターネットオブシング
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 ガートナーは、2020年にはIoTセキュリティ上の問題を解決するための費用が、年間セキュリティ予算の20%まで増加すると予想。IoT機器の使用はすべての事業部門に拡大され、IoTセキュリティに関する平均予算が、比例して拡大すると予測している。

 その他にもガートナーは、少数のスマート技術が、人々のモバイルの活動の大部分を占める「ポストアプリ」(Post-App)時代に突入するだろうと分析している。

 エクホルム氏は「2020年には、アップル・シリ(Siri)のような仮想パーソナルアシスタント(VPA)などを中心に、少数のスマートエージェント(smart agent)がモバイル活動の40%を占め、多数のアプリが不要になるだろう」と指摘した。

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