モービルアイ「自動車はAIを搭載する理想的なプラットフォーム」

ロボティア編集部2016年1月24日(日曜日)

 世界的なセンサー開発企業モービルアイ(Mobileye)の創業者アムノン・シャーシュア(Amnon Shashua)氏は、CES 2016のパネルディスカッションで次のように指摘した。

「自動車は人工知能(AI)を搭載するための最も理想的なプラットフォームと言える」

 これは膨大なデータを収集・分析し自ら走行環境を判断する完全な自動走行車には、AIが搭載されてこそ可能であるという指摘である。また今後、自動車が自ら考え学習する「スマートロボット」に進化するという予言でもある。

 グローバルITおよび自動車業界では昨年、自動走行車分野における主導権争いが本格しはじめた。それらの企業のなかでは、自動走行車とスマートホームを統合して、スマート複合産業の主導権を握ろうという動きも現れている。これらは、スマートカーおよびスマートホームを総合するためのインテリジェント・ロボットを作る構想とも連動している。

 半導体企業NVIDIAがCES2016で発表した世界初のスマートカー用人工頭脳「ドライブPX 2」がある。同コンピューターはボルボに搭載される予定であり、アウディ・BMW・ダイムラー・フォード、起亜自動車なども同社と技術協力を検討している。

 NVIDIAによれば、ドライブPX2は最高性能を誇るクラスのノートPC 150台を合わせた演算能力を誇るスーパーコンピュータだ。車両が数万種類の様々な状況に対処する能力を備えるために、人工知能とビッグデータ技術を活用して作られた。自動車に内蔵され、各種道路情報をリアルタイムで収集する。収集したデータは中央のクラウドシステムに送信され、他の車両に搭載されたコンピューターで共有、学習される。業界関係者は、「システムを人間の脳の神経回路網と最大限近づけることがインテリジェントスーパーコンピュータの目標」とした。

NVIDAドライブPX2
NVIDIAドライブPX2 photo by maximumpc.com

 自動走行車の問題に限らず、人工知能には「フレーム問題」という最大の障壁がある。そもそも、人間は自分たちが想定した事柄をコンピューターに処理させるためにプログラミングを行う。しかし、自動走行車が走行する場合に想定されるイレギュラーや周囲の環境の変化は膨大であり、それをひとつひとつ人間が想定してプログラミングしていくのはほぼ不可能である。

 NVIDIAのそれは、機械学習や人間の頭脳をハードウェア(ソフトウェアではなく)技術を組み合わせ、それら問題を解決していこうという試みのひとつであり、今後、同じようなアプローチで自動走行車のインテリジェンス化を達成しようという動きは加速するものと予測される。また前述したように、それらの技術がスマートホームの実現や、スマートカーおよびスマートホームの統合にも採用されるものと見られている。

 トヨタは昨年、5年間で10億ドル(1200億円)を投じて、ロボットおよびAI研究のため機関「トヨタリサーチインスティチュード(TRI)」を米国に設立したと発表した。トヨタは、Googleの元AI・ロボット事業統括ディレクター、ジェームス・カフナー(James Kuffner)氏だけではなく、MITとスタンフォード大学など世界最高のAI・ロボット研究者たちを招聘している。

 一方、テスラモーターズ創業者イーロン・マスク(Elon Musk)氏は、デトロイトモーターショーで「LAを出発してニューヨークまで走行できる完全自動走行車を2018年までに作る」と公言している。

 自動走行車に関して言えば、各国の法整備の状況も見逃せない。最も先進的とされるアメリカでは、ネバダをはじめとする5つの州で、自動走行車の公道走行が可能になっている。また、ニューヨーク・イリノイ州をはじめとする12の州で関連制度を審査している。そのような法的枠組みの後押しもあり、Google・アウディなどITおよび自動車企業は、自動走行車に関する公道走行実験データを膨大に積み上げはじめている。

 IHSによれば、2025年の段階で世界の自動走行車の年間販売台数は23万台に、2035年には1180万台に達すると予想されている。