米国で航空機を基地としたドローン計画「グレムリン」が承認される

ロボティア編集部2016年4月7日(木曜日)

 飛行中の航空機から複数のドローンを発進、任務遂行、帰還させる構想が現実化しそうだ。米国防総省は、航空機を基地とする多目的ドローンの開発事業(第一段階)を承認した。

 英・日刊紙デイリーメールは、米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)関係者のコメントを引用。4月4日、ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)、ゼネラルアトミックス(general atomics)、コンポジットエンジニアリング(composite engineering)など4つの防衛産業企業が、「グレムリン(Gremlins)」という名称の多目的ドローン製作を開始することを承認したとした。

グレムリン_妖精
photo by 映画「グレムリン」

 グレムリンはスティーブン・スピルバーグ氏がプロデュースし、1984年に公開された映画およびキャラクターの名前でお馴染である。欧米では機械にいたずらする想像上の生き物としても知られており、第二次世界大戦当時、イギリス軍飛行士の間では、グレムリンを目撃すると、機械の故障など必ず事故が発生するという迷信が出回ったりもした。

 米国防部がグレムリン製作計画を承認したのは、安全かつ多様な任務遂行のためだという。複数台のドローンを搭載した輸送機、B-52爆撃機などが目標上空に到着後にドローンを発進させ、その後すぐに対空ミサイルなどの圏外に離脱。ドローンが任務を完了すると、C-130ヘラクレス輸送機が空中でこれを回収・帰還する。そして、再び24時間以内に他の任務に投入できるようにするというのがDARPAの基本的な構想となる。

グレムリン計画
photo by militaryaerospace.com

 輸送機など固定翼航空機を拠点として利用することで、「短い作戦距離」というドローン最大の欠点が大幅に改善される。また、グレムリンドローンは、積載量を減らす方法などを駆使して20回ほど再利用することができ、運用費の削減も見込まれる。グレムリンが実戦に本格的に配置されれば、偵察、爆撃、近接地上支援などさまざまな任務を遂行でき、一方で高額な航空機を代替する効果も期待できるとDARPA側は強調している。

 航空宇宙専門メディア「フライトグローバル(flightglobal)」は、グレムリン事業の責任者であるダン・パット(Dan Patt)研究部長の言葉を引用。作戦半径は555~926㎞で、回収直前まで1〜3時間のフライトができるように設計されていると伝えた。なお、一台あたりの価格は70万ドル(約7600万円)以下に策定されている。

 パット氏はまた、グレムリンを空中で発射・回収する概念を技術的に満たすために尽力するとし、構想通りすべてのミッションが達成できるようになれば、全世界の危険地域で様々な作戦と任務遂行が可能になると期待感をあらわにした。

photo by DARPA