米海洋保護区、海洋生物にドローンが”接近しすぎる”事例が頻発

ロボティア編集部2016年4月10日(日曜日)

 米カリフォルニア州のセントラルコーストの海上を、写真および動画撮影用ドローンが飛行。海洋生物のすぐ近くまで接近する事例が相次ぎ、専門家たちから懸念が浮上している。

 モントレーベイ国立海洋保護区のポール・ミシェル監督官は、メディア「トリビューン・オブ・サンルイスオビスポ(The Tribune)」に対し、ドローン所有者たちが野生保護を悩ましていることに気づいていないと打ち明けた。同保護区では、昨年から海洋生物に影響を与えうるドローンの飛行が急増しているという。

 米国の海洋哺乳類保護法は野生動物を悩ませることに対し警告を発しており、セントラルコースとの4つの海洋保護区では、航空機が1000フィート以下で飛行することが禁じられている。

セントラルコースト_ドローン2
photo by airsoc.com

 ミシェル氏はすべてのドローン所有者が間違ったことをしている訳ではなく、研究調査員たちは許可を得て海洋保護区でドローンを飛ばしているとも強調した。加えて、おそらく今後、ドローンガイドラインは保護区の実情に合わせて修正、条項が増えていくだろうが、それよりもまずドローンに関する”エチケット”が必要になるのではとしている。

 報道を総合すると、ミシェル氏は海洋生物の魅力に惹かれてドローンを飛ばすのは仕方ない側面もあるが、まずは自然保護という観点から、使用者ひとりひとりが考えを深めるべきではないかという提言をしている風に思える。

 なお、ミッシェル氏はドローンガイドラインに“接近距離に対する制限”が加えられることが望ましいと話す。というのも、ドローンがあまりにも近くに接近すると、海洋生物の習慣を変えてしまうおそれがあるからだ。

アメリカグマ
photo by pulseheadlines.com

 ドローンが野生動物に及ぼす影響はそれだけではない。ナショナルジオグラフィックに寄稿したジェニファー・ホランド(Jennifer Holland)氏は、次のように指摘している。

「極端なケースでは、遠隔操作された飛行体がアメリカグマに近づいた際、心拍数が1分間に39から165まで上昇したことがある。400%の大きな増加だ」

 なお、ミネソタ大学の研究者マーク・ディトマー(Mark Ditmer)氏は、「その心拍数の上昇は、ダブルコークスクリューローラーコースターに乗った時に人間が経験するものだ」としている。

 ドローンは野生生物を観察する上で有効な手段として注目されている。が、専門家のアドバイスのもと作られた、一定の飛行基準やガイドラインも同時に必要になりそうだ。